「寝台列車はロマン」だけ? 伝統の列車が風前の灯 “夜行復活ブーム”から取り残された英国らしい苦境

日本の定期寝台列車は「サンライズ瀬戸」と「サンライズ出雲」だけに減ってしまいましたが、英国も2列車だけが残っています。海峡を挟んだヨーロッパ大陸側は寝台列車がにわかに見直されているものの、英国は事情が少し異なるようです。

生き残った2列車

 どこかの駅に到着した気配で夜中にふと目が覚める。ホームに少し出て知らない土地の空気を吸ってみようか、それとも、深夜の駅のひっそりとした音に耳を傾けながら寝ていようか。そんなことを迷っているうちに、いつしかまた眠ってしまった??。寝台列車好きなら、一度は経験したことがある夜のひとコマではないでしょうか。

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寝台列車「サンライズ出雲」(画像:写真AC)。

 寝台列車はかつて日本全国を走っていましたが、現在、定期運行しているのは東京~出雲市間の「サンライズ出雲」と、東京~高松間を走る「サンライズ瀬戸」の2列車のみ(東京~岡山間は併結)。

 同じく、英国でも現在ではたった2列車のみが細々と走っています。ひとつは、1873年から運行を続けている、首都ロンドンからスコットランド各地を2系統で結ぶ「カレドニアンスリーパー(Caledonian Sleeper)」。もうひとつは、1983年から首都ロンドンと英国南西のバカンス地コーンウォールを結ぶ「ナイト・リビエラ(Night Riviera)」です。いずれも週6回運行しています。

 長いこと、日米欧で長距離旅行の主軸のひとつだった寝台列車の旅。英国でも1960年代にはロンドンからスコットランドまで行く定期運行の寝台列車だけでも、実に15系統もありました(Europe by Rail: The Definitive Guideによる)。

 ところが、日本と同じように高速鉄道や格安航空券、割安な民泊などの普及で寝台列車は衰退。「1000kmまでは高速鉄道を選ぶ人が多く、それより長距離は寝台列車の人気が高まる」(ウェストミンスター大学エンリカ・パパ教授の論文による)そうですが、日本の本州は長さ約1500km、英国で一番大きな島のグレートブリテン島は南北1200km、東西700kmですから、日本で「あさかぜ」などが次々と廃止になったように、英国の寝台列車も同じ運命をたどりました。

 そんな中、カレドニアンスリーパーが母体を変えつつ19世紀から運行を続けてこられた理由として、広報担当者は、寝台列車でスコットランドまで旅してみたいという「旅のロマン」を求める根強い層があることを挙げています。

【写真】英国の寝台列車「カレドニアンスリーパー」の寝台を見る

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