船も「スマホ化」? ついに建造「EVコンテナ船」海運を変えるか 電気も“貨物”!? 永遠に古びないかもしれないコンセプトとは

「5年で船長になれる船」に 海運業界を変える?

 こうした点が評価され、EVコンテナ船のプロジェクトは、環境省の「地域共創・セクター横断型カーボンニュートラル技術開発・実証事業」に採択されました。実証期間は2024年4月から2027年3月までとなっています。

 EVコンテナ船はまず1隻が建造されますが、主要機器やシステムの標準化・モジュール化によって量産化が可能です。また、神戸―広島航路はマツダなどの自動車部品輸送を行っています。自動車会社はCO2削減への感度も高いことから、ゼロエミッション運航可能なコンテナ船がさらに投入されればサプライチェーン全体のGHG削減にも寄与できるでしょう。

 末次CEOは「神戸―広島航路はコンテナ船を4隻投入している。今後、2番船、3番船、4番船と増やしていきたいと私は思っている」と話します。

「より少人数、省スキルで船を動かせるようにすることが狙いだ。今、トラックドライバーが2024年問題で稼げなくなり、船員に転職するという事例も出てきている。そういった船員でも5年ぐらいで船長にまでなれるようにしていきたい」(末次CEO)

 実際、EVコンテナ船には内航船向け次世代コックピットシステム(操舵室)と離着桟支援システムの実装し運航時の負担を軽減するとともに、船上で熟練者が整備するのではなく、陸上のエンジニアが寄港地でメンテナンスできるような体制も整えていく予定です。

 さらにこの船は、将来的に水素燃料電池やバイオ燃料、合成燃料などに対応する発電機に換装することも想定。将来の新規技術・システムの導入にも柔軟にアップグレード可能な設計を採用するとしています。技術が発展途上なうえ、価格も高いEV船が抱える「船の陳腐化」というリスクを最小限に抑え、同じ船(ハード)を買い替えずにソフトウェアをアップデートしていくという発想です。

 ハイブリッド方式を採用したことで、EV船のインフラが整備されていない東南アジアなど海外への売船も視野に入っています。

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Marindowsも関わった旭タンカーのEV船「あさひ」。陸上の給電設備からプラグを介して充電する(深水千翔撮影)。

 Marindowsの末次CEOは、旭タンカーが保有する世界初のピュアバッテリータンカーである「あさひ」(492総トン)や2番船の「あかり」(497総トン)、ハイブリッド型電気推進貨物船「あすか」(496総トン)、東京汽船の電気推進タグボート「大河」(約280総トン)にも関わっています。第2世代型EV船の開発で、船の電動化が進んでいくことが期待されています。

【了】

【驚愕コンセプト!】これが「EVコンテナ船」です(画像)

Writer: 深水千翔(海事ライター)

1988年生まれ。大学卒業後、防衛専門紙を経て日本海事新聞社の記者として造船所や舶用メーカー、防衛関連の取材を担当。現在はフリーランスの記者として活動中。

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