「管制塔から光で誘導」は神ワザか? JAL便で生きた二重三重の対策 “無線途絶”実はけっこう多い
「無線交信が取れない状態で目的空港へ無事に到着」――JAL便で発生したアクシデントで、管制官はどのようにこの機を誘導したのでしょうか。航空交通のルールから読み解きます。
「ライトガン」が広く知られるきっかけに
2024年4月18日、羽田発新千歳空港行きのJAL(日本航空)512便が、函館の周辺空域を飛行中、無線機器の不具合が生じ、管制官と交信が取れない事態となりました。それでも当該便は無事に新千歳空港へと到着しています。無線交信が不能となったこの件の裏側では、一体どのように管制官はパイロットを誘導していたのか、航空交通のルールから読み解きます。
この無線通信ができなくなったこのJAL便の動向を振り返ると、無線通信機故障の場合における手順に従い新千歳空港へ向かい、最終進入を開始。最後は管制塔から照射された「指向信号灯(ライトガン)」による着陸許可を確認し、無事着陸に成功しています。
このライトガンは航空機と無線通信ができない場合に、航空機などへ向けて照射し、必要な信号を送ることで指示を伝える装置です。今回のアクシデントの報道で広く知られることになりました。
基本的に旅客機のパイロットは常時、管制官からの指示を受け、継続的な交信ができる状態にあることを前提とし、そのフライトが許可されています。一方、自家用や遊覧飛行などの小型の軽飛行機は、管制官からの指示を必要としない代わりに、パイロット自身で外界を監視し安全を確保する必要があります。
この前者を「計器飛行方式」、後者を「有視界飛行方式」と呼びます。その原則にのっとれば、無線通信機故障により管制官と交信ができない状況は、計器飛行方式の前提から外れていることになります。
このことは、新千歳空港のAIP(航空機運航のための公示情報)に記載された「Lost communication procedures for arrival aircraft under radar navigational guidance(無線通信途絶時の着陸機に対するレーダー誘導のガイダンス)」からも読み取ることができます。要約すると、次のような内容です。
「もし1分経っても新千歳空港のレーダー管制席と交信ができない場合は、スコークを7600に設定し、次の対応を行うこと。第一に新千歳空港のレーダー管制席または飛行場管制席(空港の管制塔)に呼びかける。第二に有視界飛行方式で飛行する。第三に管制官から最後(無線交信が途絶える前)に指定された高度または7000フィートのどちらか高い高度で滑走路に向けた進入を行うこと。状況次第で必要に応じたこれら以外の方法を取る場合がある」
スコーク7600というのは、パイロットが管制官へ無線に異常があることを伝えるために、国際ルールで定められた共通のコード番号です。これをパイロットが入力することで、管制官はレーダー画面上に映る複数の機のうち、どの便が無線機異常の状態にあるか把握することが可能です。
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