早くも号令「国産旅客機つくります」…できるの? 国費大投入「MSJ」失敗から見る日本の“欠点”とは

事実上開発に失敗した三菱重工製のジェット旅客機「MSJ」。しかし国は早くも次の旅客機開発に再び巨額予算を投じると発表しています。現在の国産ジェット旅客機開発に足らないものは、一体なんなのでしょうか。

MSJには 500億円の公的資金が

 2023年、「MSJ(Mitsubishi SpaceJet・旧称MRJ)」と呼ばれる三菱製国産ジェット機の開発中止が発表されましたが、2024年、経済産業省では早くも次の旅客機開発に再び巨額予算を投じると発表しています。もう失敗はない、ということでしょうか。筆者は、現在の国産ジェット旅客機開発に足りないものがあると感じます。

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三菱航空機「スペース・ジェット」(画像:三菱航空機)。

 MSJは国民の期待と夢を集めながら6回も開発の遅延が繰り返され、「開発を一旦立ち止まる」と先延ばしされた挙句、最後は事業からの撤退が発表されました。事実上の失敗です。この航空機の開発に公的資金だけでも500億円が注ぎ込まれ、開発費の総額は1兆円にも上ると報道されています。

 MSJの失敗を受けて経済産業省は検証委員会を開催しました。同省は失敗の要因として、実用化に不可欠な認証を得るプロセスの理解と経験不足、海外サプライヤー対応の経験不足など4点を指摘したものの、それらを解決する方法と道筋を発表するまでには至っていません。この点において、検証委員会そのものが不完全であったと指摘されても反論できないでしょう。にも関わらず、経済産業省では早くも次の旅客機開発に再び巨額予算を投じるとしたわけです。

 しかし、失敗の原因を除去する事なく再挑戦しても、カネと時間の無駄に終わる懸念は拭えません。

認証プロセスに絞ってみると、つまずいてしまったのは日本の航空法と航空行政が欧米とは比較にならないほど遅れていることに起因すると考えられます。

 航空機の安全基準と認証基準は航空法やそれに付帯する施行規則や通達などで定義されています。主要国間においては、航空法や航空機の安全基準、パイロットの資格などを国際的に標準化する努力が続けられてきました。

 旅客機先進国ともいえるFAA(アメリカ連邦航空局)とEASA(欧州航空安全委員会)は、そうした規則全般の相互認証と標準化をかなり深いレベルまで実践しています。これはそう簡単に実現できるような作業ではないことから、2機関双方が多くの専門家と大変な労力を投入して進めてきたものです。そのため、FAAとEASAが合意して導入したルールは事実上の世界基準となっています。

【画像】超異形! MSJの元ライバル「エンブラエル」が構想する次世代民間機

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