早くも号令「国産旅客機つくります」…できるの? 国費大投入「MSJ」失敗から見る日本の“欠点”とは
「日本で旅客機産業が育たない理由」は役人の働き方が関係?
まず、日本の役所では定期的に人事異動があります。そのため、全く異なった分野から新任担当者が赴任してくることがあります。そうなると、新任担当者は基本的なことから勉強することになります。
航空法や航空工学には高度な専門性が要求されるため、担当者が懸命に勉強してもそれを活かすステージに入る前に再び人事異動により航空とは全く関係ない部署に転籍になってしまうことがあります。そうなると後任者は再び一からやり直しです。
その点、海外諸国の航空行政機関では、民間から経験者を責任者として登用することや、最初から航空工学、航空法などを専攻した人材を採用しスペシャリストとして育て上げているのです。そして専門とは関係のない部署へ異動させることもありません。
つまり、日本型人事制度では最初からスキルが不足しているところに来て、組織内で知識や経験の継承が不十分であるといえます。これではいつまでたっても諸外国に追いつくことは無理でしょう。
また、日本の官僚特有の習性として責任回避の姿勢が顕著なことも一因かもしれません。そのためいくら優秀であっても、新しい技術や制度の導入に対し、もはや「臆病」といえるほど慎重になっていると考えられるのです。
海外の官僚制度は責任と権力の一体化を徹底していて、責任者は与えられた権限を行使して必要な決定を迅速に行うことが期待されています。日本が国際競争力を失い諸外国との差が開きつつある原因の一つはここにあると見ています。
日本特有の人事制度や組織的問題を克服するまでは、航空法や航空行政を諸外国レベルまで引き上げることは難しいでしょう。つまり、MSJの失敗を繰り返さない国産ジェット旅客機の開発には、そうした問題から克服することが必要である――というのが筆者の結論です。
【了】
Writer: 中島二郎(航空アナリスト)
各国の航空行政と航空産業を調査するフリーのアナリスト。
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