早くも号令「国産旅客機つくります」…できるの? 国費大投入「MSJ」失敗から見る日本の“欠点”とは

ちゃんと欧米以外にも「基準に沿って旅客機を実用化」した国はある

 そして、そのFAA・EASAの世界基準化に遅れる事なく、それを自国に導入してきたのがブラジルです。今や米ボーイング・欧州エアバスに続く第3の航空機メーカーにまで成長したエンブラエルがブラジルで生まれた土壌がそこにあります。

 世界では互いに航空法などを標準化して相互に認め合う「BASA」という二国間合意を締結する動きがあります。日本はアメリカなどいくつかの主要国とBASAを締結、もしくは締結に向けて作業を行う事で合意しています。

 しかしこのBASAは単に合意しただけでは全く無意味で、そこから双方が綿密なすり合わせと検討を重ねてルールの共通化と相互承認を実現していく必要があります。日本ではその部分の作業が思うように進んでいないのです。

 アメリカとは2009年に合意した後、その適用範囲の拡大に向けた作業が行われていたようですが、MSJの開発失敗までの経緯で露呈したことは、FAAと国土交通省航空局の間ですり合わせが進んでいないことでした。三菱MRJ(当時)では開発中、途中でボーイングがコンサルタントとして参加しましたが、数百か所にも及ぶ設計変更が必要と指摘した――という記録があるほどです。

 筆者は、これには国交省の組織的問題が関係していると分析しています。

 まず、国交省の作業があまりにも遅過ぎるので、結果として日本では航空法の改訂どころか、大臣通達の変更でさえ信じがたい年月を要します。そのため、やっと国内規則を改訂しても、その時には世界ではさらに進んだルールができてしまう――この繰り返しなのです。たとえば自機の位置を緯度経度の座標情報を含んだ信号で、周囲にいる他の航空機に発信するシステム「ADS-B」の制度化などがこれにあたります。

 なぜここまで作業に時間を要するのでしょうか。それは日本の役所特有の人事制度と官僚の習性があると筆者は考えています。

【画像】超異形! MSJの元ライバル「エンブラエル」が構想する次世代民間機

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