ナニこの翼!「世界初のジェット旅客機」 設計は今じゃあり得ない? トホホ機なるも残した功績

世界初のジェット旅客機デ・ハビランドDH.106「コメット」。その開発は前人未到ゆえ、さまざまな苦難に遭遇しました。とはいえ、それらの経緯は、その後世界中の旅客機の設計に生かされることになりました。

実験したら、みるみる亀裂が…

 これらの事故では、イギリス海軍が地中海に派遣され、機体の残骸が引き上げて調査が行われました。その結果、高い高度を飛行中の与圧による金属疲労が疑われました。

 ジェット機はプロペラより高い高度を飛ぶことで、空気抵抗を軽減して高速飛行が可能になります。空気の薄い、つまり気圧の低い高高度では、人為的に機内の気圧を高めることで居住性を確保する必要があります。そのため胴体にはプロペラ機より高い気圧が作用して金属疲労を助長したという仮説が立てられたのです。

 その仮説を証明するために、大きな水槽へ同型機の胴体を丸こと沈め、水中で機内を繰り返し加圧する試験が行われました。その結果、予想よりはるかに少ない回数で亀裂が発生し、その亀裂が急速に成長して構造破壊に至る現象が確認されました。

 この試験結果をもとに設計変更が行われ、亀裂が大きく成長することを防止する「フェイルセーフ構造」の導入とともに、機体の外板もより厚いものが使用されることになりました。

 また、初期タイプでは客室窓が四角に近い形状でしたが、この角の部分に気圧差による力が多く集中してしまい、亀裂の発生につながったとして、設計の見直しも図られることに。現代のジェット旅客機の客室窓がどれも丸いのは、この教訓を生かしたものです。

 そうしている間に初期型の「コメット」は退役、それまでに多くの航空会社から発注されていた注文は全てキャンセルされました。

 デ・ハビランド社は新設計の機体構造に加え、胴体の延長、新型エンジンのロールスロイス・エイボンを搭載した大西洋横断も可能な新型機を開発。この「コメット4」は耐空証明を1958年に取得しましたが、すでに航空会社の興味は、より大型で高性能なボーイング707とダグラスDC-8に移っていました。

 イギリスでも事実上の後継機として開発されていたヴィッカースVC-10が登場すると「コメット」の旧式化は決定的となり、1964年に各型合計112機で生産を終了しました。

 旅客機としては短命に終わった「コメット」でしたが、その後のジェット旅客機の設計における安全性向上に、図らずも大きな貢献を果たしたことは間違いないでしょう。

【了】

【写真】窓四角!エンジンの位置も凄い! 「世界初のジェット旅客機」全貌

Writer:

航空評論家、各国の航空行政、航空機研究が専門。日本オーナーパイロット協会(AOPA-JAPAN)元理事

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