戦車砲の煙突みたいな「T字型の先端」なぜなくなった? 今もついている砲との違いは? “穴”を多くする意味

廃れてしまった理由とは?

 マズルブレーキの原型は、速射砲が登場し始めた19世紀末に考えだされていましたが、実用化に至ったのは1920年代に入ってからです。ソ連やスウェーデン、チェコなど、当時火砲や機関砲の開発が盛んだった国でまず、野戦砲や機関砲に採用されることになります。

 戦車砲に搭載されるものに関しては、第二次世界大戦中頃から本格的に登場します。戦車砲の大型化に伴い、野戦砲のように振動や弾道の安定性などに問題が出てくるようになり、そうした問題を解決するために装備されるようになりました。

 ただマズルブレーキは砲弾発射時に発生したガスを大量に、広い範囲に噴射するため、同じ場所で射撃し続けると、ガスで視界がさえぎられることも問題でした。そのため、ドイツの駆逐戦車では待ち伏せ攻撃など、隠密行動を重視し、あえてマズルブレーキをつけない車両も存在していました。

 しかし、2024年現在に話を戻すと、りゅう弾砲や自走りゅう弾砲にはマズルブレーキが搭載されていますが、主力戦車には搭載されていません。これは駐退機の性能が向上し、油圧で反動を吸収できるようになったからです。

 振動が抑えられるようになると、以前よりも精密な射撃が可能になりました。すると今後は、マズルブレーキでガスを砲弾の発射方向以外に逃がしてしまうと精密な弾道制御に不都合が出てしまい、だんだんと廃れていきました。

 一方で、りゅう弾砲などに関しては、射撃精度が戦車ほど求められない点と、油圧などでの重量増加は好ましくないということもあり、引き続きマズルブレーキが取り付けられています。

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韓国海兵隊の「パットン」戦車(画像:大韓民国国防部)。

 マズルブレーキの有無は、2024年5月26日に静岡県御殿場で行われる富士総合火力演習(総火演)でも確認することができるはずです。99式自走155mmりゅう弾砲やFH70りゅう弾砲の砲撃後、ガスが砲の正面だけではなく、左右からも発生します。

【了】

【あ、砲の左右から爆風が!】これが、自衛隊のFH70りゅう弾砲を発射したときです(写真)

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