「箱根山戦争」から激変!? “新参者”が打ち出した令和の新・遊覧船 箱根をどう変えるのか
「箱根山戦争」から60年以上 そして「富士急」がきた
この芦ノ湖の遊覧船は、2022年まで西武グループの伊豆箱根鉄道が運営していました。そもそもは、西武グループの源流の一つである「箱根土地」が、芦ノ湖の渡船組合を統合し、観光船事業を独占して以降、「西武の箱根」の象徴的存在であり続けました。
これに対し、戦後に小田急グループの「箱根観光船」が設立され、小田急と西武の対立が激化。昭和30年代前後は、獅子文六の小説で描かれ「箱根山戦争」と呼ばれた熾烈な交通シェア争いが繰り広げられました。
その後、両者は手を取り、協力して箱根周辺の交通機関を盛り立ててきましたが、こうした構図があったからこそ、この5月に小田急の8000系電車が西武鉄道の「サステナ車両」として譲渡された際には、SNSで鉄道ファンが「歴史的瞬間」「箱根山戦争終結」などと驚きの声を上げたのです。
しかし伊豆箱根鉄道は近年、箱根地区の事業を縮小。ついに富士急グループへ交通の一部を譲渡したのです。
富士急グループは山梨県側の富士山に通じる鉄道を母体とし、遊園地「富士急ハイランド」が売上の過半を占める企業ですが、静岡県でも、御殿場・沼津エリアでも路線バスを展開するほか、熱海エリアの開発も手掛けています。そうしたなかで長らく入れなかったのが箱根でした。
ちなみに、SORAKAZEになった「はこね丸」を含む、伊豆箱根鉄道時代に導入された遊覧船3隻はいずれも「双胴船」と呼ばれるタイプで、同タイプとしては日本で初めて導入されたものだとか。
「海と違って塩の影響がないので、(船齢40年以上でも)まだまだ使えます。窓が大きく、揺れない、しっかりした船です。窓を大きくするのは堤さんの指示だったそうです」と川西さん。箱根の土地を買い集め、戦前からいち早く箱根の観光を育て西武グループを主導した堤家へ思いを馳せました。
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