【10式戦車ができるまで】新戦車に見合う「砲弾」ができるまで 威力の割に外さない! 空力つきつめた形どうやって?

主砲含め純国産戦車として開発された10式戦車は、使用する砲弾も独自開発の国産のものです。しかし、砲弾の開発にもそれまで経験したことのない苦労があったようです。

90式戦車にはなかった空包の開発にも着手

 10式戦車の主砲弾に限らず、運動エネルギーによってぶ厚い装甲を貫く、いわゆる徹甲弾では貫徹力と命中率が相反するため、威力を上げようとすれば、命中率は自ずと下がるのが一般的です。

「10式戦車砲」では威力向上を図るため、新砲弾も独自開発することにしましたが、それにあたりメーカーであるダイキン工業では「発射薬システムの確立」「飛翔体の設計」「装弾筒の設計」を行っています。

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富士総合火力演習で走りながら射撃を行う10式戦車(武若雅哉撮影)。

 ひとつめの「発射薬システムの確立」では、発射薬の燃焼温度は上げないで、火薬力(火薬が爆発した際に発生するガス圧力)を上げる発射薬の組成を検討し、射撃を含む各種試験によって候補を絞っていきました。

 2番目の「飛翔体の設計」では、空力特性や貫徹威力などの飛翔体に関する設計データを取得することが肝要でした。そこで、空力特性に関するデータ取得については、JAXA(宇宙航空研究開発機構)が持つ超音速風洞試験装置を借用して各種試験が行われています。

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10式戦車はネットワークシステムによって、離れた位置にいる僚車の位置なども瞬時に共有できる(武若雅哉撮影)。

 これら試験データを基に、少しでも優れた風防や翼の形状を設計し、弾芯を空力的に最も優れた形状にすることで、基本的な威力の向上を図っていったのです。

 しかし、抜本的な威力の向上を目指すには、弾芯素材の高強度化や高L/D化の実現が不可欠でした。

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Writer: 武若雅哉(軍事フォトライター)

2003年陸上自衛隊入隊。約10年間勤務した後にフリーフォトライターとなる。現場取材に力を入れており、自衛官たちの様々な表情を記録し続けている。「SATマガジン」(SATマガジン編集部)や「JWings」(イカロス出版)、「パンツァー」(アルゴノート)などに寄稿。

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