【10式戦車ができるまで】「90式できたばかりだろ?」それでもなぜ「新型戦車は必要」訴えたのか みんな文句ばっかり!

日本を代表する高性能戦車の10式戦車。すでに部隊運用が始まってから10年以上が経過していますが、その開発は1993年頃にスタートしています。ただ、30年前は冷戦が終わったばかり。新戦車の必要性を理解してもらうところから始まりました。

新戦車の必要性を説くのがまず大変

 2010年に装備化され、2012年から本格運用が始まった陸上自衛隊の10式戦車。国産の120mm滑腔砲や独自開発の複合装甲、1200馬力の水冷4サイクルV型8気筒ターボディーゼル、油圧機械式無段階自動変速操向機などさまざまな特徴を有する、日本を代表する戦車ですが、その開発は一筋縄ではなかったようです。

 さまざまな困難を乗り越え誕生した「日の丸戦車」開発の経緯を、複数回にわたって振り返ります。

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北海道の第7師団第71戦車連隊に配備されている10式戦車(武若雅哉撮影)。

 10式戦車の前に、日本が独自開発したのが90式戦車です。同車は1990(平成2)年度から調達が開始され、翌年9月に量産1号車が部隊に納入されています。

 当初は「90式戦車で世界に追いついた」と評されるほどで、そのデビューは華々しいものでしたが、当時の90式戦車は、いわば初期故障排除という戦力化の途上にありました。これは、あらゆる工業製品が同じ道を辿る「初期不良」を洗い出す時期でした。

 また、90式戦車の特徴のひとつが、自動装填装置を搭載した点です。これにより、乗員は装填手がいらなくなり、操縦手、砲手、車長の3名になりましたが、これに関する評判は散々で、OBからは自動装填装置の故障率を問われる状況だったそうです。

 これには、陸上幕僚監部研究課研究班も「装備化したら関係ない」とはいかず、常に部隊などから報告される初期不良の対応に追われていたとか。そんな90式戦車がデビューして間もない1993(平成5)年頃、防衛庁(当時)ならびに陸上自衛隊の内部では早くも「次期戦車」の開発チームが動きだそうとしていました。

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10式戦車の20年前に制式化された90式戦車。日本戦車としては最大の重量50tある(画像:陸上自衛隊)。

 しかし、世界に追いついた90式戦車がデビューしてまだ3年。内部には「時期尚早」や「新たな技術はまだない」といった意見に加え、「無関心」を示す人たちも多かったそうです。

 無理もありません。まだ90戦車の配備が始まって間もないころであり、現場も含めて新戦車、次期戦車といっても具体的なイメージなど抱ける状況になく、予算の獲得もまだ先の話だったからです。

 その一方で、諸外国のすう勢に目を凝らしている一群からは、新戦車の開発は進めるべきだとの声が上がっていたのも事実でした。このまま新戦車の研究開始が遅れては、そのぶん陸上自衛隊に90式の後継となる新戦車が配備されるのは後ろ倒しになるからです。

 90式戦車でせっかく世界に追いついたのに、新戦車の開発で出遅れた結果、再び他国に追い越されてしまうことは、関係者としては許せなかったといえるでしょう。

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90式戦車は、富士学校や武器学校といった教育機関を除くと、ほぼ全数が北海道の戦車部隊に配備・運用されている(画像:陸上自衛隊)。

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Writer:

2003年陸上自衛隊入隊。約10年間勤務した後にフリーフォトライターとなる。現場取材に力を入れており、自衛官たちの様々な表情を記録し続けている。「SATマガジン」(SATマガジン編集部)や「JWings」(イカロス出版)、「パンツァー」(アルゴノート)などに寄稿。

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