“自衛隊パジェロ”ウクライナで好評も「困ってます」「無理して使ってます」 露呈した装備品輸出の“欠けた視点”

日本からウクライナへ送った「パジェロ」ベースの軍用車両が、現地で使われ好評のようです。ただ、現場では苦労している側面も。「売りっぱなし」の状態は、今後の装備品輸出では禁物かもしれません。

「パジェロ」ベースで快適性アップ

 防衛省は2025年10月14日、「1/2tトラック」28台と、高機動車2台のウクライナへの発送を完了したと発表しました。

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陸上自衛隊の1/2tトラック。ウクライナでも使われている(画像:陸上自衛隊)

 日本はウクライナがロシアに侵攻を受けて以降、101台の自衛隊車両を提供していました。2024年10月に行われた日本とウクライナの防衛相会談では、それに加えて約30台の追加提供で合意しており、今回発送が完了した1/2tトラックと高機動車は、その合意に基づいて提供されたものです。

 1/2tトラックは2001年まで、「73式小型トラック」と呼ばれていた車両です。

 防衛庁(当時)は1970年代に、当時ジープが開発した四輪駆動車をライセンス生産していた三菱自動車が、ジープの四輪駆動車「J-24」を防衛庁の要求に合わせて改良した「J-24A/23A/25A」を、73式小型トラックとして制式化しました。

 73式小型トラックは人員や貨物の輸送だけでなく、無反動砲などを搭載する攻撃車両などとしても重宝されましたが、1990年代に入ると旧式化が顕著になります。当時の排気ガス規制にも適応できないことから、防衛庁は1996年、当時三菱自動車が製造していた四輪駆動車「パジェロ」の二代目モデルを、73式小型トラックの後継として導入を開始しました。

 パジェロベースの車両は新型装備の採用ではなく、あくまでも73式小型トラックの更新という形で導入が開始されました。このため複数のメーカーによる競争入札は行われておらず、「73式小型トラック」という名称も引き継がれました。ただ、同じ名称の異なる車両が二つ存在すれば混乱を招きますので、2001(平成13)年度に納入された車両からは、1/2tトラックに名称が変更され、現在に至っています。

 1/2tトラックはパジェロの部品を流用する形で開発されたため、エアコンや災害情報収集用のAM/FMラジオを備えるなど、J-24ベースの先代73式小型トラックに比べて乗員の快適性が大幅に向上しています。筆者(竹内 修:軍事ジャーナリスト)も、悪い評判を聞いたことがありません。

【カッコいい!】これがウクライナでも活躍する「自衛隊パジェロ」です(写真)

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コメント

1件のコメント

  1. 今回の輸出は、長く使ってもらうよりも消耗品としての性格が強いから、及第点なんでしょう。

    さて、73式小型トラックから1/2tトラックへの名称変更は平成12年(2000年)に各種器材の名称変更の通達が出ており、各種トラックを初め化学器材や需品器材の名称変更が示されています。

    それによると「73式」はあくまでも仮名称だったようで、制式ではなかったようです。

    制式装備品ではなかったのでジープからパジェロベースへと全く異なる車両になっても「73式小型トラック」の名称でも問題はないとされたのです。なお、(新)が付くのはあくまでも便宜上です。

    「73式」の年式を冠する小型トラックは標準仕様車と警務隊仕様車のみであり、他の派生車はジープタイプも含め全て「1/2t~」いう名称だったのでこれらを統一するために名称変更をしたとされています。

    つまり、ジープもパジェロベースも同様の1/2tトラックの名称です。

    同様に73式中型トラック(派生車の救急車は1 1/2t救急車)、73式大型トラック(派生車のダンプは3 1/2t

    ダンプ)、74式特大型トラック(派生車は74式の冠なし)も名称変更されたのです。

    また、同じくしてトラック類の装備仕様変更が示されており、AT車が標準仕様でエアコンと情報収集用のカーラジオが標準装備されることになりました。実際には、パジェロベースの小型トラック(平成8年度納入車以降)、高機動車ベースの中型トラック(平成11年度納入車以降)、大型トラック(平成12年度納入車以降)から標準装備になっています。

    高機動車は上記のトラック類ではないとされ、にエアコンが標準装備になったのは最近だというなんともお役所仕事です。