飛行機の「反り返った主翼先端」もう一つのメリットとは 「燃費削減だろ?」→いえ、違います!
「ウイングレット」装備で考えられるもう一つの効果
この実験のために米空軍はKC-135空中給油機を一機提供。KC-135はおよそ800機が生産された軍用輸送機で、ボーイング707旅客機の姉妹機でもあります。飛行実験は、「ウイングレット」が取り付けられたKC-135を用いて48回行われ、飛行中の抵抗が減少することで、6.5%の燃料消費削減効果があることが確認されました。
そうしたテストののち、1990年頃よりウイングレットを装備した航空機が登場しはじめます。NASAはこの機構の効果について、現在までに約1万機のジェット機がウイングレットを取り付けたことで、のべ400億リットルのジェット燃料が節約され、単純計算では1.3億トンの二酸化炭素削減に相当するものと発表しています。
このように、燃料消費削減効果を狙って導入されてきたウイングレットですが、近年もう一つの効果が指摘されています。
それは、翼端渦の減少により「航跡乱流」を軽減させる効果です。航跡乱流は、前進する航空機が背後に残す乱気流です。この乱気流は機体の大きさに比例して発生し、その後ろを飛ぶ飛行機にとっては危険な存在にもなり、過去にはこれを要因とする航空事故が実際に発生しています。そのため、大型機の後方を他の旅客機が飛ぶ場合、先行機の大きさに比例して一定の間隔をおいて飛行するという決まりがあるほどです。
つまり、ウイングレットによって航跡乱流が減れば、その分安全を十分確保可能になることから、航空機同士の最低間隔を狭められる可能性があるといえます。最初は燃料節約を狙って普及したウイングレットでしたが、これからは過密化する航路上で他機の安全性を確保する目的で、ウイングレット装備が推奨される時代が来るのでは、と筆者は想像しています。
【了】
Writer: 細谷泰正(航空評論家/元AOPA JAPAN理事)
航空評論家、各国の航空行政、航空機研究が専門。日本オーナーパイロット協会(AOPA-JAPAN)元理事
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