日本一? 超~遅いスピードで走る「黒子の列車」とは なぜ遅い?「これが仕事だよ!!」

人手不足の日本で独自進化した「カニ歩き」車両

 日本で主流の削正車は、小回りの利く20頭前後のものだそうですが、実は保線の分野も深刻な「人手不足」に陥っているため、昨今では各メーカーとも省力化・省人化マシンの開発に、しのぎを削っています。

 中でも注目は、「保線機器整備」という会社が開発したばかりの「RGSB-U14」です。

 これはいわゆる14頭式で、全長約8.4m、重量約14t。車両は中くらいの部類ですが、注目なのが、自ら「カニ歩き」しながらトラックを乗り降りするほか、線路へのセッティングまでこなします。

 線路のそばまでトラック輸送された本車は、クレーン車が作業時に張り出す「脚」のような「アウトリガー」を伸ばし、まず自らの車体を120cmほどアップさせ、輸送トラックを移動させます。次にアウトリガーを横方向に、50cmずつゆっくりと動かし、線路上まで移動させ、アウトリガーを縮めてレール上に接地、準備完了です。

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レール削正車による作業の様子。高速回転する砥石をレールに押し付けて表面を削正し、レールの寿命を延ばす(画像:JR東海)。

 通常、削正車の搬入・撤収には大型クレーンが必要ですが、これにともなう手間・ヒマ・コスト、そして人手もがかかりません。

 加えて、本車の移送の際に使用する車両が「大型トラック」だという点も、実は大きなポイントです。

 この最大積載量は通常20t(最大で25t)なので、14tの本車なら余裕で積載でき、また荷台床面の高さも9~12mが普通なので、「低床型」であれば、余裕で「自分で乗り降り」が可能です。また大型トラックの荷台全長も多くが10mなので、本車を楽に積みこめます。

 利点はこれだけではありません。仮にトレーラー輸送が必要となると、この運転手は大型免許に加えて牽引免許が必要になり、それだけ人件費が嵩んでしまいます。さらにトレーラーの場合、高速道路料金もぐっと跳ね上がってしまいます。

 それが、この「RGSB-U14」であれば必要なくなるため、保線会社の取得・運用コスト、ひいては鉄道会社の保線コストの圧縮にもつながるのです。

 これらを鑑みると、削正車というニッチな領域でも、すでに「省力・省人競争」が始まっているといえるでしょう。

【了】

【おぉ、自力で乗り降りしてる】これが「コスパ良し!」な次世代レール削正車です(写真)

Writer: 深川孝行

1962年、東京生まれ。法政大学文学部地理学科卒業後、ビジネス雑誌などの各編集長を経てフリージャーナリストに。物流、電機・通信、防衛、旅行、ホテル、テーマパーク業界を得意とする。著書(共著含む)多数。日本大学で非常勤講師(国際法)の経験もある。

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