全国唯一の珍風景「特急の寸止め縦列駐車」まもなく見納め! 乗務員も「緊張する」一体なぜこんな方法を?

“縦列停車”いつから? 遅延原因を一気に解消

 この操車方法が採用されたのは1993年3月、予讃線 高松~伊予市間の電化完成に合わせて8000系特急「しおかぜ」「いしづち」が本格的に運用を開始した時からだといいます。

 それまで両列車は別々の番線に停車し、乗客は階段を経由しての乗り換えだったため、かなりの時間を要し遅延の一因となっていたところ、縦列停車の採用で一気に改善されたといいます。

 ただ、この方法により課題も生まれます。

 現在は岡山・高松方に「いしづち」、松山方に「しおかぜ」が併結されますが、当時はその逆の順番で編成が組まれていました。これは、岡山発着の「しおかぜ」と高松発着の「いしづち」を途中の宇多津駅で分割・併結する際、「しおかぜ」を優先的に発車させたり、併結時の待機時間を短縮したりして、岡山での新幹線乗り継ぎを有利にするためでした。

 そうすると、1号車に設定されている「しおかぜ」のグリーン車に乗る場合、松山駅では改札口及び「宇和海」からの乗り継ぎに約250mを移動しなければなりませんでした。利用者から「グリーン車に乗るのに一番端まで移動させるとは何事か」と苦情が寄せられたこともあり、1998年、現在の編成に落ち着いのです。

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1953年築の2代目駅舎。シンボルの三角屋根は2000年に増築されたもの(坪内政美撮影)。

 その際まるごと8000系の編成を方向転換させる必要があったため、深夜に宇多津駅北側の予讃線と瀬戸大橋線とを分岐するデルタ線を使って方転作業が行われ、一部ではそれをツアーにしたことで当時話題になったといいます。

 そんな鉄道ファン注目の“珍風景”ですが、9月29日に島式ホーム2面に4線という構成の高架駅へと切り替えられた後は、同一ホームで向かい合わせる列車同士の乗り継ぎに変更となります。この夏は、伊予鉄道の大手町踏切で展開される「ダイヤモンドクロス」と並ぶ松山の2大鉄道珍風景「松山駅寸止め縦列停車」を拝みに行くのも、おすすめです。

【了】

【こ、これが松山…】珍景「特急縦列駐車」と新しい高架駅!(写真で見る)

Writer: 坪内政美(スーツの鉄道カメラマン)

1974年生まれ、香川県在住。いつでもどこでもスーツで撮影に挑む異色の鉄道カメラマン・ロケコーディーネーター。各種鉄道雑誌などで執筆活動をする傍ら、予土線利用促進対策協議会のアドバイザーやテレビ・ラジオにも多数出演するなど、鉄道をワイフワークに活動している。著書に「鉄道珍百景」「もっと鉄道珍百景」「駅スタンプの世界」「100万キロを走ったセドリック」(いずれも天夢人刊)がある。

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