100年現役の軍艦が来日! 要人の訪問が相次ぎ周りではお祭 これぞ「イタリア式海軍外交」か?

空母は公開せずに練習帆船で大々的にPRしたワケ

 筆者(吉川和篤:軍事ライター/イラストレーター)が4日間に渡って会場を訪れたところ、記念式典だけではなく一般公開日も、「アメリゴ・ヴェスプッチ」の周りや隣接する東京国際クルーズターミナルには、後から別便で来たイタリア軍人や各国の駐在武官、駐日イタリア大使館をはじめとした外国公館の関係者、日伊両政府の要人、さらにはビジネス関係者まで、さまざまな人たちが頻繁に出入りしているのを垣間見ることができました。

 これを見て、意味は全く違うものの、かつて軍艦を使って各国が盛んに行っていたいわゆる「砲艦外交」に変わる、21世紀のソフトで開かれた「海軍外交」という言葉が、筆者の脳裏には浮かんだのです。

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記念式典に参加したイギリス海軍将校(中央)や各国の駐在武官たち。元々、イタリア海軍の軍装はイギリス海軍の影響を受けており、今でも良く似ている(吉川和篤撮影)。

 イタリア側が発表している各種ニュースのコメントを調べてみると、今回の帆船「アメリゴ・ヴェスプッチ」の世界周航キャンペーンと、この7月にイタリア空海軍が参加したオーストラリアでの共同訓練「ピッチブラック」も含めたインド太平洋への長距離展開が実は、最終的にここ日本でリンクしており、そこにはイタリア国防省や外務省も絡めたイタリア政府の戦略的な対外アプローチも含んでいることが判明しました。

 おそらく、そうした意図があって今回来日した空母「カヴール」と練習艦「アメリゴ・ヴェスプッチ」は、計画的にわずか数日違いで寄港、両艦と乗員の日本での同時滞在を数日設けたのではないかと筆者は考えます。

 そしてこれは個人的な推測ですが、外交的にも一般的な見栄えも見越して“イタリア”をアピールすべく、警備面でオペレーションしやすい練習艦の来航に全振りしようと、あえて空母「カヴール」の艦内公開は見送ったのではないかと、一連の来日を取材して思いました。

 いずれにしても「海の女王」とも呼ばれる貴重な帆船が、イタリア海軍ごと日本にやって来たのは画期的な出来事です。三沢基地へのイタリア空軍の飛来に始まり、横須賀基地への空母「カヴール」とフリゲート艦「アルピーノ」の来航に続く、“イタリア強化月間”と言える2024年の8月を締めくくるには相応しいイベントであったと、これらを振り返って改めて感じています。

 またいつの日か、この美しい船と出会える日を願って止みません。

【了】

【画像】イタリアならでは! これが3色にライトアップされた「海の女王」の姿です

Writer: 吉川和篤(軍事ライター/イラストレーター)

1964年、香川県生まれ。イタリアやドイツ、日本の兵器や戦史研究を行い、軍事雑誌や模型雑誌で連載を行う。イラストも描き、自著の表紙や挿絵も製作。著書に「九七式中戦車写真集~チハから新砲塔チハまで~」「第二次大戦のイタリア軍装写真集 」など。

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