日本の装備品なぜ輸出ふるわない?「まず考えられるのは…」日本メーカーが米企業と組んで学んだ“決定的な違い” 【中編】

「ツール」だけでは不十分で…

 そうして誕生した現在のアメリカ企業では、防衛装備品の開発プロセスをさまざまな道具(ツール)を使って合理化し、期間短縮や費用の削減を進めています。なかでも、デジタル化したエンジニアリング手法、いわゆるDXの活用については、近年各社がアピールを強めています。

DXを活用することにより、デジタル空間上で装備品をパーツレベルから作成し、組み立てて、試験することができます。つまり、実際にものを作る前に、あらゆるリスクや問題点を発見し、対処することができるのです。

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洗井昌彦 三菱電機 執行役員 防衛・宇宙事業本部副事業本部長 兼 防衛システム事業部長(画像:三菱電機)。

このDXについて、洗井事業部長はそのメリットを次のように説明します。

「(日本企業におけるDXの活用は)あまり進んでいません。そこを改革していくことが重要だと思います。DXを活用すれば、試作品を作る前にデジタル空間上で装備品を作成し、評価し、悪い点を改善して再び試験するということができます」

そして、これは防衛装備品にとって最も重要な「維持整備」の観点からも欠かせないことだといいます。

「どんなに素晴らしい装備品でも、どこそこの部品が交換できないとなれば、何の価値もありません。そこで、『この部品を交換するにはどのくらいの手間暇がかかるのか』ということをデジタル空間上で事前にシミュレーションできるというのは、極めて重要なことです。そして、それを導入しようとすると、これはアメリカの企業からしか学べないというのが正直なところです」

 しかし、そうしたDXに関わるツールを導入する場合、単純にそれを「外から持ってくる」だけでは不十分だといいます。

「最近、いろいろな企業からさまざまなシミュレーションツールやグラフィックツールなどを紹介されます。しかし、それは単なるツールであって、実際にはわが社の良いところは残しつつDXを導入して、コンセプトの開発から最終出荷、維持整備までの全体をスムーズに流すことができるような仕組みを自分たちで作り上げることが必要なのです」

 つまり、そうしたツールをただ導入するのではなく、自社としての装備品開発の流れや仕組みを作り上げ、それに合う形のツールを導入していくことが重要ということです。これを実現するためには、日本企業として新たな文化の形成が求められることになるのかもしれません。

【了】

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Writer: 稲葉義泰(軍事ライター)

軍事ライター。現代兵器動向のほか、軍事・安全保障に関連する国内法・国際法研究も行う。修士号(国際法)を取得し、現在は博士課程に在籍中。小学生の頃は「鉄道好き」、特に「ブルートレイン好き」であったが、その後兵器の魅力にひかれて現在にいたる。著書に『ここまでできる自衛隊 国際法・憲法・自衛隊法ではこうなっている』(秀和システム)など。

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