「135年間ありがとう」 途方もない歴史を持つ交通機関なぜ廃止? 「できることはやってきた」それは“瀬戸内の風景”の異変

JR尾道駅前に広がる尾道水道で、135年の歴史を持つ「渡し船」が廃止を告知。それは「尾道の風景の一部」といっても過言ではありません。航路が消滅する影響、そして今後についてを取材しました。

135年も続けてきた渡船の廃止

 しまなみ海道の起点として近年賑わう尾道で、2024年9月末、「渡し船」の運航を135年余り続けてきた「福本渡船」(福本フェリー株式会社、尾道市向島町)が来春3月末で廃業するというニュースが伝えられました。廃業の理由は「施設の老朽化」といいます。

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渡し船が行き交う尾道水道。向島の「兼吉の丘」付近から(山本佳典撮影)。

 多くの「渡し船」ファンから愛されてきた同社ですが、旺盛なインバウンド需要も見られるなかで、今なぜ廃業を決意したのでしょうか。「渡し船」の今後の見通しや行政の考え方など、気がかりなことを取材しました。

「尾道」と聞いて、細長い海を挟んで広がる街並みを思い浮かべる人は多いでしょう。JR尾道駅の南に広がる幅200-500mほどの海峡は「尾道水道」と呼ばれ、実際に目の前に立つと「運河では?」と疑うほどの穏やかさです。

 広島県東南部に位置する尾道市は、瀬戸内沿岸部の中心市街地を含む本土側と、尾道駅の対岸の向島、因島、生口島などの島しょ部からなります。市全体の人口12.6万人のうちの6割強が本土側に集まる一方、島しょ部にも3割強の市民が暮らしています。

 島々では、古くから盛んな造船関連産業や漁業に加え、全国に知られる柑橘類など、さまざまな農産物も生産されます。一方、本土側では、古くから尾道港を中心に市街地が発展し、明治期になると鉄道駅も設置されて人の往来と商業がますます盛んになりました。

 経済活動の興隆とともに、「尾道水道」では地域内外の各地を結ぶ様々な船舶が往き交うようになり、市井の人々の交通手段となる極短距離・多頻度運航の「渡し船」も江戸時代から次第に発達していきました。東西約6kmの沿岸部にはかつて12もの航路が存在したといいますが、3航路に減少した現在でも、「渡し船」は老若男女の交通手段として生活に欠かせない存在であり続けています。

【これが尾道の日常!】橋があってもみんな「渡し船」な風景(写真)

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