過酷な「スバルライン電車」実現するか 急坂&急カーブで片道52‐74分 道路を線路にする「富士山登山鉄道」の課題とは
過酷な急勾配・急カーブはクリアできる?
技術課題についても検討が行われました。
富士スバルラインは、平均52‰(パーミル)、最大88‰の勾配や、6か所のヘアピンカーブ(最小曲線半径27.5m)を有します。勾配と急カーブが組み合わさった箇所も複数あり、車輪の空転や乗り上がり脱線のリスクがあります。
ちなみに、レールと車輪の摩擦力だけで走る一般的な鉄道「粘着式鉄道」の国内最急勾配は、箱根登山鉄道の80‰です。富士山登山鉄道の計画は、この勾配を上回る可能性があります。
報告書では、晴天時は安定走行が可能で、雨天時は勾配40‰以上での加速で車輪が空転する可能性があるものの、増粘着剤散布装置の導入によって解決できるとしています。脱線対策としては、脱線防止ガードと外軌ゲージコーナ潤滑で対応します。
LRTへの給電は、ワイヤレス方式も検討されていましたが、報告書によると、線路脇に給電用レールを設置する第三軌条と、バッテリーの併用が適していることが分かりました。第三軌条は、早期実装を進める観点で実績があり優位性があることが理由です。また、バッテリーは途中駅周辺や人が線路を横切る区間、急カーブなどでの使用が想定されています。
車両のブレーキは、回生ブレーキ、機械ブレーキなど複数のシステムを組み合わせて安全を確保します。車両は、途中駅での乗り降りが少ないと想定されることから、低床型ではなく、床下に各種機器を積載する「普通型」が適しているとしています。1編成は長さ30m、定員60人で、これを2編成つなげて運行します。
山麓から五合目までの所要時間は、五合目行きが52分、山麓行きが74分です。
採算が取れるとする年間利用者300万人は、年間営業280日、複線、2編成連結(定員120人)、6分間隔で1日100往復という前提で試算されています。
報告書では今後、事業化に向けて、想定する入山者数や技術検討・地元協議を踏まえた交通システム、付帯事業などの決定、関係法制度への対応、予約システムや運賃設定などを検討内容として挙げています。
【了】
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