密室のコックピットで!? 戦闘機パイロット襲った「大トラブル」いまだ完全解決できない切実な課題とは
大型機と違ってパイロット1人のことが多い戦闘機。単独飛行中に生理現象が襲った場合、自身で飛びながら処理する必要に迫られます。しかし、過去には手元が狂って墜落に至ったケースも。その顛末を振り返ります。
大型機ではまず考えられない墜落原因
今から30年以上前の1992年9月8日、1機の戦闘機が操縦不能に陥り墜落しました。機種はアメリカ空軍の1人乗り戦闘機F-16C「ファイティングファルコン」、操縦していたのは同軍所属のスネルグローブ中佐です。
なぜ墜落したのか、その原因は想像を絶するものでした。なんと、切迫した生理現象に襲われたからだというのです。
我々一般人にとって、空の旅のトイレ問題は日常生活に根差した些細な悩みのひとつに過ぎません。国内線であれ国際線であれ、旅客機であれば機体の大小にかかわらず機内にはほぼ必ずトイレが設置されており、用を足せるのは至極当然のことです。しかし、戦闘機パイロットにとって、トイレ問題はそう簡単に片付けられるものはありません。限られた狭い空間、高度な機動性、そして生死を分ける緊張感の中で、生理現象は常に不測の事態を引き起こす可能性をはらんでいます。スネルグローブ中佐のケースは、そのことを如実に物語っていると言えるでしょう。
当時、スネルグローブ中佐は僚機とともにトルコのインジルリク空軍基地を離陸し、イラク北西部に設けられた「飛行禁止空域」におけるパトロール任務に向かっていました。飛行計画には2回の空中給油が予定されており、その飛行時間は4時間に及ぶ長丁場となることが見込まれていました。
そのため彼は「小用」の「ピドルパック」を携行していました。ピドルパックは中にスポンジ(または高吸収性ポリマー)が含まれたプラスチック容器で、これにより水分を吸収・保持できる「携帯用トイレ」です。
尿意に襲われたスネルグローブ中佐は、30分間の巡航中であり、時間的な余裕があったことから、用を足すことを試みます。自動操縦に切り替え、腰ベルトの金属バックルを外し、それを太ももの上に置きました。そして飛行用手袋を外そうとした際、右手の手袋をコックピットに落としてしまいます。拾い上げようと手を伸ばしたとき、突如不運が襲います。バックルが射出座席と操縦桿の間に挟まってしまったのです。
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