「そのデカいのは“帆”なのか!?」世界の船乗りが驚愕! 商船三井の「スゴい貨物船」が帰還 風を味方にして“意外な効果”も
実は自動で伸縮 得られる“意外な効果”とは?
1隻目となる「松風丸」には4段式で最大高53m、幅15mのタイプが搭載されましたが、2隻目の「GREEN WINDS」に採用されたのは、3段式で最大高39.5m、幅11.4mのタイプです。これは100型バルカーの「松風丸」に比べて小さい船型の64型バルカーである「GREEN WINDS」に合わせたものですが、量産化に向けて多くの点で改良がされています。
商船三井の技術ユニットゼロエミッション技術革新チームでチームリーダーを務める若林陽一さんは「積載する荷物の量を減らさないようにするため、軽量化に気を配った」と説明します。
「昇降機構を油圧式から電動式へ変更し、帆の枚数も4段から3段へ減らした。機構をシンプル化することで、製品として完成度を上げている。さらにCFRPの採用部分も増やした。搭載ハードルを下げることで普及を進めていく」(若林さん)
さらにウインドチャレンジャーでは風力を最大限に活用するため、帆を自動で制御するシステムを備えています。風が弱い時には帆を伸ばす展帆を、風が強い時には帆を縮める縮帆も自動的に行います。
荷役時や出入港時は縮帆した状態ですが、大洋航海に出てナビゲーションオートモードに切り替えると、3枚のセイルが展帆し最大推力を得られるよう、風の強さや向きをセンサーで感知し帆を回転させます。
「例えば真横から風が吹いた場合、普通の船はローリングが激しくなる。今回の航海では風速15mぐらいの横風の中を通ったが、帆を風が受け止めたのかローリングが小さいという体感があった」(仙田船長)
商船三井はウインドチャレンジャーを「GREEN WINDS」に搭載したことで、航路などの条件次第で約7―16%の燃料節減とGHG削減効果を見込んでいます。同社は今後、ウインドチャレンジャー搭載船を2030年までに25隻、2035年までに80隻を投入することを計画しており、新造船では4万2000重量トン型のハンディサイズバルカー3隻と5万8000重量トン型のハンディマックスバルカー3隻への導入が決まっています。
【了】
Writer: 深水千翔(海事ライター)
1988年生まれ。大学卒業後、防衛専門紙を経て日本海事新聞社の記者として造船所や舶用メーカー、防衛関連の取材を担当。現在はフリーランスの記者として活動中。
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