「クラウン3000台積み」トヨタの巨大LNG自動車運搬船が2隻体制へ “次の燃料”も決定済み!? どんどん進む“車輸送の脱炭素”
三菱にも大きな実績に?
一方で課題となるのがLNGのバンカリング(供給)です。寄港する中京地区のLNGバンカリング船は「かぐや」1隻のみ。日本全体を見ても関東地区の「エコバンカー東京ベイ」は就航が遅れており、稼働しているのは九州・瀬戸内地域の「KEYS Azalea」と合わせて2隻にすぎません。そのため「TRANS HARMONY EMERALD」はシンガポールやマレーシアといった地域でLNG燃料の補給を受けることになります。
三菱造船はこれまで商船三井さんふらわあのフェリー「さんふらわあ くれない/むらさき」(1万7114総トン)やKEYS Bunkering West JapanのLNGバンカリング船「KEYS Azalea」(4744総トン)といったLNG燃料船を建造してきました。トヨフジ海運の「TRANS HARMONY GREEN」と「TRANS HARMONY EMERALD」も手掛けることで、環境規制への対応で代替需要が見込まれる外航RORO船の分野でも実績を積み重ねています。
次は「メタノール船」
さらにトヨフジ海運は内航向けに、メタノール燃料RORO船2隻を導入することを決めています。2024年6月に三菱造船との間で建造契約を締結し、竣工は2027年度を予定しています。
内航RORO船でメタノールを主燃料として使用する船は初めてです。1隻目はトヨフジ海運が保有し、2隻目はトヨフジ海運と福寿船舶が共同で保有します。
新造メタノール燃料RORO船のスペックは、長さ約169.9m、幅約30.2m、総トン数約1万5750トン。乗用車の積載能力はトヨタクラウン換算で約2300台です。船首には風防スクリーンと垂直ステムを採用して推進抵抗を低減、高効率プロペラや抵抗低減型高性能舵を組み合わせた独自の省エネシステム技術により燃費を改善します。
主機関には、メタノールとA重油それぞれを燃料として使用できる高性能DFを搭載します。メタノールは、同じ船型で重油を使用した場合と比較して、CO2排出量を10%以上削減することができるため、環境負荷の低減につなげることが可能です。
トヨフジ海運の広報担当者によると、「TRANS HARMONY EMERALD」を含むLNG燃料RORO船には、水素と回収したCO2(二酸化炭素)を合成した「合成メタン」の使用も視野に入れているとのこと。メタノール燃料RORO船にもバイオマス由来や回収したCO2と再生可能エネルギーで生成した水素との合成燃料「グリーンメタノール」を活用することで、ライフサイクルを含めたCO2排出量の更なる削減を図っていくことが考えられています。
【了】
Writer: 深水千翔(海事ライター)
1988年生まれ。大学卒業後、防衛専門紙を経て日本海事新聞社の記者として造船所や舶用メーカー、防衛関連の取材を担当。現在はフリーランスの記者として活動中。
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