JR西日本の全面運休 わき起こる賛否両論

休み明けの通勤電車が混乱した可能性も

 私鉄は路線が短く、列車の走行距離も短めで、運行体系も比較的単純です。それに対しJR西日本は路線が長く、列車の走行距離は長め。運行体系も他路線への直通運転が多いほか、特急から普通、貨物まで様々な列車が追い越し追い抜かれながら複雑に絡み合う場合があります。

 つまり柔軟に列車を運行することがあまり簡単ではないうえ、ダイヤが混乱すると私鉄に比べJR西日本は収拾が難しいのです。もし運行して大きく混乱してしまった場合、車両や乗務員のやりくりに影響が出て、休み明けである14日(火)朝の通勤時間帯に列車の運休などが発生したかもしれません。デメリットもありますが、台風による影響を最小限に抑え、翌日の運行をより安定、確実なものにするという意味では、こうした計画運休は効果があるといえます。それにもちろん「安全が最優先」です。

 ただ「安全は最優先」ですけれども、次のような例もあります。

 1970年代、国鉄の労働組合が上層部との闘争手段として「順法闘争」を行いました。例えば、列車が60km/hに速度制限されているカーブを通過する場合、運転士は「安全のため」として、止まりそうな速度まで減速しながらカーブを通過。当然、ダイヤは大きく乱れていきます。簡単にいえば「安全のため」「法令や規則を厳密に守るため」といった名目で非合法とは言い切れない手段を用い、ダイヤを乱すなどして上層部へ圧力をかける、というものです。当然、乗客は大きく憤慨。暴動が発生したこともありました。

 これはあくまで極端な例で、今回のJR西日本の決断と直接結びつけることは難しいですが、「安全のため」がどんなときでも順当な理由になるとは限りません。

 「安全な運行」と「安定した運行」。似たような言葉ですけれども、背反するものです。その背反するふたつの要素をいかに両立していくか。今回得られたデータを含めて研究と対策が進み、鉄道が社会においてより便利で信頼できるものになることを願うばかりです。

【了】

Writer: 恵 知仁(鉄道ライター)

鉄道を中心に、飛行機や船といった「乗りもの」全般やその旅について、取材や記事制作、写真撮影、書籍執筆などを手がける。日本の鉄道はJR線、私鉄線ともすべて乗車済み(完乗)。2級小型船舶免許所持。鉄道ライター/乗りものライター。

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