同時開業できなかった東北・上越新幹線 地図に残るその理由

上越新幹線の影響で新幹線開業後も残った在来線特急

 新幹線が開業すると、役目を終える並行在来線特急は廃止されるのが一般的です。

 東北新幹線開業まで、在来線の東北本線には上野~仙台間の特急「ひばり」14往復、上野~青森間の特急「はつかり」6往復、上野~盛岡間の特急「やまびこ」4往復など、多数の特急列車が運転されていました。

 しかし1982年6月23日に東北新幹線の大宮~盛岡間が開業しても、「ひばり」8往復、「はつかり」6往復が同じ運転区間のまま残っています。

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東北新幹線開業後も残った上野~仙台間の特急「ひばり」。写真は2007年に行われたリバイバル運転時のもの(撮影:恵 知仁)。

 この新幹線と在来線特急が併存するという珍しい状態も、上越新幹線の工事遅れが影響していたりします。

 東北・上越新幹線の開業に伴い状況が一変するため、在来線の大規模なダイヤ改正が必要でした。しかし上越新幹線の工事が遅れたことから、東北・上越の同時開業ができなくなります。ならばダイヤ改正は東北新幹線が開業する6月と、上越新幹線が開業する11月に合わせて2回行えばいいのか、と思うかもしれません。しかしそれは大変難しいことでした。

 当時の状況について、JR東日本の代表取締役会長を務めた故山之内秀一郎氏は著書『東北・上越新幹線』(JTBキャンブックス)のなかで、仮に東北新幹線開業に合わせて並行する東北本線系統でダイヤ改正を行うとしても、列車の接続などを考えると上越新幹線に関係する在来線も相当な変更が必要であったこと、そして特に東北・上越方面へのターミナルである上野駅で短期間に2回も大規模改正を行うことは、作業計画の変更や人員配置、教育、当時の労使関係を考えると「とても不可能」だったと述べています。

 そこで6月の東北新幹線開業時におけるダイヤ改正は「形ばかりの」小規模なものにとどめて、11月の上越新幹線開業時に本格的なダイヤ改正を行うことを決定。そのため東北新幹線開業後も11月の本格改正まで、同じ区間を走る在来線特急が残存したのです。この残存した在来線特急は一部を除き11月のダイヤ改正でいわば正式に役目を終え、廃止されました。

【了】

Writer: 恵 知仁(鉄道ライター)

鉄道を中心に、飛行機や船といった「乗りもの」全般やその旅について、取材や記事制作、写真撮影、書籍執筆などを手がける。日本の鉄道はJR線、私鉄線ともすべて乗車済み(完乗)。2級小型船舶免許所持。鉄道ライター/乗りものライター。

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コメント

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1件のコメント

  1. 東北も11月開業にすれば良かったじゃん、というツッコミが有ってもよさそうなものだが……
    当初予定から大幅に遅れていた開業日について、いったいいつになるのかと詰め寄られ、昭和57年春と公約させられてしまった事情がある。
    それすらも危うくなってきたため、気象庁から6月は春のうちという見解を引き出し、嘘つきと言われないためギリギリの引き延ばしだったという逸話が伝わっている。