同時開業できなかった東北・上越新幹線 地図に残るその理由

2014年11月15日で32周年を迎えた上越新幹線は、東北新幹線と同じ年に開業しました。しかしその「誕生日」は、上越と東北で異なっています。当時、同じ大宮駅を起点に運転されていた両新幹線です。同時開業でもよさそうなものですが、なぜそうしなかったのでしょうか。その理由を、現在の地図にみることができます。

上越新幹線の不自然なカーブ

 2014年11月15日は、上越新幹線32回目の誕生日です。1982(昭和57)年11月15日に大宮~新潟間が開業し、速達タイプの「あさひ」、各停タイプの「とき」が走り出しました。

 さて、この上越新幹線開業から約5ヶ月前、1982年6月23日には東北新幹線の大宮~盛岡間も開業しています。同じ駅を起点にしながら、わずか5ヶ月違いで開業した上越新幹線と東北新幹線。同日開業にしてもよさそうなものですが、なぜ違うのでしょうか。新幹線の開業となるとダイヤ改正も必要ですから、同時開業のほうが手間も少なくなります。

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左側の点線が上越新幹線の中山トンネル。子持山の西側、中山峠付近で不自然に曲がっている(資料:国土地理院)。

 しかし、それをできなかった理由がありました。上越新幹線は高崎~上毛高原間、子持山付近を全長14.9kmの中山トンネルで通過しています。その部分を地図で見ると、妙な形で線路が一部だけ曲がっています。これが東北新幹線と同時開業できなかった原因です。

 この中山トンネルでは、掘削中に大規模な出水が発生。1分間に40トンを越える水が噴き出しました。そこでやむを得ずこの区間を迂回してトンネルを掘り直すことになり、工事が遅れ、東北新幹線との同時開業が難しくなってしまったのです。地図にある上越新幹線の妙なカーブは、そのためです。

 また、迂回で半径1500メートルという新幹線では急なカーブができてしまったことから、上越新幹線はここで160km/hの速度制限を行っています。

上越新幹線の影響で新幹線開業後も残った在来線特急

 新幹線が開業すると、役目を終える並行在来線特急は廃止されるのが一般的です。

 東北新幹線開業まで、在来線の東北本線には上野~仙台間の特急「ひばり」14往復、上野~青森間の特急「はつかり」6往復、上野~盛岡間の特急「やまびこ」4往復など、多数の特急列車が運転されていました。

 しかし1982年6月23日に東北新幹線の大宮~盛岡間が開業しても、「ひばり」8往復、「はつかり」6往復が同じ運転区間のまま残っています。

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東北新幹線開業後も残った上野~仙台間の特急「ひばり」。写真は2007年に行われたリバイバル運転時のもの(撮影:恵 知仁)。

 この新幹線と在来線特急が併存するという珍しい状態も、上越新幹線の工事遅れが影響していたりします。

 東北・上越新幹線の開業に伴い状況が一変するため、在来線の大規模なダイヤ改正が必要でした。しかし上越新幹線の工事が遅れたことから、東北・上越の同時開業ができなくなります。ならばダイヤ改正は東北新幹線が開業する6月と、上越新幹線が開業する11月に合わせて2回行えばいいのか、と思うかもしれません。しかしそれは大変難しいことでした。

 当時の状況について、JR東日本の代表取締役会長を務めた故山之内秀一郎氏は著書『東北・上越新幹線』(JTBキャンブックス)のなかで、仮に東北新幹線開業に合わせて並行する東北本線系統でダイヤ改正を行うとしても、列車の接続などを考えると上越新幹線に関係する在来線も相当な変更が必要であったこと、そして特に東北・上越方面へのターミナルである上野駅で短期間に2回も大規模改正を行うことは、作業計画の変更や人員配置、教育、当時の労使関係を考えると「とても不可能」だったと述べています。

 そこで6月の東北新幹線開業時におけるダイヤ改正は「形ばかりの」小規模なものにとどめて、11月の上越新幹線開業時に本格的なダイヤ改正を行うことを決定。そのため東北新幹線開業後も11月の本格改正まで、同じ区間を走る在来線特急が残存したのです。この残存した在来線特急は一部を除き11月のダイヤ改正でいわば正式に役目を終え、廃止されました。

【了】

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Writer: 恵 知仁(鉄道ライター)

鉄道ライター、イラストレーター。「鉄道」や「旅」に関する執筆活動や絵本の制作を行っているほか、鉄道車両のデザインにも携わる。子供の頃からの旅鉄&撮り鉄で、日本国内の鉄道はJR・私鉄の全線に乗車済み。完乗駅はJRが稚内で、私鉄が間藤。メインは「鉄道」だが、基本的に「乗りもの」好き。

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