現れた「始発」の文字 上野東京ライン開業を前に揺らぐ上野駅
上野駅にとって重大な意味を持つ「始発」の文字
ただこれは「上野駅」の大きな変化を意味します。
東京と北関東、東北方面を結ぶ多くの列車は古くから上野駅を始発・終着駅にしており、同駅は「東京の北の玄関口」と呼ばれました。そして石川啄木が上野駅について詠んだ「ふるさとの訛りなつかし停車場の人ごみの中にそを聴きにいく」、また高度経済成長期に上野駅へ到着した集団就職が題材の井沢八郎『あゝ上野駅』など、列車の運行という意味でも、そうした人々の心という意味でも、上野駅は「ターミナル(起点・終点)」として歴史を重ねてきました。
しかし1991(平成3)年に東北新幹線が東京駅まで延伸され、そして2015年3月、上野東京ライン開業で在来線も東京駅方面へ直通。北関東、東北方面からの多くの列車が目的地としていた「東京の北の玄関口」上野駅は、「途中駅」になります。
今回、上野駅の電光掲示板に起きた差異は小さなものです。しかし「上野駅」にとってはとても重大な意味があります。同駅はいま、変化の時を迎えています。
【了】
Writer: 恵 知仁(鉄道ライター)
鉄道を中心に、飛行機や船といった「乗りもの」全般やその旅について、取材や記事制作、写真撮影、書籍執筆などを手がける。日本の鉄道はJR線、私鉄線ともすべて乗車済み(完乗)。2級小型船舶免許所持。鉄道ライター/乗りものライター。
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