通勤電車引退ツアーが満員御礼 人気の理由は焦げた臭い?
車両から漂う焦げ臭さの正体
東武8000系に乗っていると駅に停車した際、焦げたような臭いを感じることがあります。とはいえ、トラブルが発生したわけではありません。
この東武8000系が搭載しているブレーキは、車輪のレール接触面をブレーキシューで押さえつけて回転力を落とす「踏面ブレーキ」というものです。この踏面ブレーキが作動したとき、車輪とこすれ熱せられたブレーキシューから焦げたような臭いが漂ってくることがあるのです。
東武8000系は1963(昭和38)年に登場し、東武各線で使用されてきた車両であるため、東上線ユーザー以外にもその臭いをかいだことのある人は多いと思います。決してよい香りではないかもしれませんが、その臭いは東武8000系の特徴として鉄道ファンに知られており、よくある通勤電車ながら存在感が少なくないのです。その臭い、いや香りがたまらん、という人もいるとか。
ちなみに東武30000系電車(1997年登場)や山手線のE231系500番台(2002年登場)といった近年の電車では、物理的に車輪などを押さえつけることなく、搭載しているモーターを使って車輪の回転力を落とす「純電気ブレーキ(全電気ブレーキ)」だけで停車することが可能です。
また東武8000系は1963年からおよそ20年間も製造が続けられたこと、製造両数が712両と私鉄で最多であることもポイントです。国鉄が同様に1963年から約20年間にわたって3447両という、同形式車両の製造両数では日本一の数を製作した103系通勤形電車になぞらえ、東武8000系は「私鉄の103系」と呼ばれることも。その臭い以外にも鉄道趣味、鉄道史的には重要な車両なのです。
【了】
Writer: 恵 知仁(鉄道ライター)
鉄道を中心に、飛行機や船といった「乗りもの」全般やその旅について、取材や記事制作、写真撮影、書籍執筆などを手がける。日本の鉄道はJR線、私鉄線ともすべて乗車済み(完乗)。2級小型船舶免許所持。鉄道ライター/乗りものライター。
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