「ロマンスカー」のDNA 大山ケーブル新車は眺望が命

新型ケーブルカーは駅で充電

 ケーブルカーは車両に動力を搭載せず、地上にあるモーターでケーブルを巻き上げることで動きますが、線路の上空には一般的な鉄道と同様、車両へ電気を供給する架線が設置されています。車内の照明や放送装置などに電気が必要なためです。

 しかし上空に架線があると、特にケーブルカーは傾斜が厳しいため、車内の麓側から眼下を眺めた場合、正面に架線がチラチラと、景色の邪魔をすることになります。

 そこで大山ケーブルカーは新しい展望車両の能力を最大限活かすべく、架線を撤去。邪魔のない美しい車窓を実現しました。

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架線に邪魔されず、スッキリした開放感ある眺望を楽しめる(画像提供:大山観光電鉄)。

 ただ問題となるのが、車内で使う電気をどうするかです。

 これを解決するため、大山ケーブルカーは新型車両にリチウムイオン電池を搭載し、途中駅へは充電設備を設けることにしました。駅への停車中に車両のバッテリーへ充電し、走行中はその電気を使う、という形です。充電池を活用した現代らしいシステムになっています。ちなみに夜間は車内照明を暗くして運行するため、大きなガラス越しに夜景を楽しむこともできるそうです。

 この大山ケーブルカーは全長約800mで、所要時間は6分。標高400mにある麓の大山ケーブル駅と、標高678mにある山上の阿夫利神社駅を結びます。今年5月18日から9月30日まで大規模設備更新工事で運休したのち、10月1日から新型車両で運行を再開する予定とのことです。

 大山は「大山講」が各地で組織された信仰の山で、「大山詣り」という江戸時代が舞台の古典落語でも知られます。また神奈川県は横浜、鎌倉、箱根に続く「第4の国際観光地」を創出すべく、この大山を「新たな観光の核づくり構想」地域に認定。振興を図っています。

【了】

Writer: 恵 知仁(鉄道ライター)

鉄道を中心に、飛行機や船といった「乗りもの」全般やその旅について、取材や記事制作、写真撮影、書籍執筆などを手がける。日本の鉄道はJR線、私鉄線ともすべて乗車済み(完乗)。2級小型船舶免許所持。鉄道ライター/乗りものライター。

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