問題山積、羽田空港アクセス線 タイムリミットは1年後

オリンピックに間に合う? 少なくはない懸念

 いいことずくめのように思える羽田空港アクセス線ですが、もちろん課題や問題点もあります。というより、課題や問題的ばかりで簡単には実現できない、といったほうがよいかもしれません。

 最大の課題といえるのが、膨大な額の建設費です。既に述べているように、貨物線の活用などで費用を抑えることができるものの、それでも地質がよいとはいえない東京湾岸の埋立地を縦断する地下・海底トンネルを整備しなければならないため、全体では約3200億円の費用が必要とされています。この費用をどうやって調達するのか、まだ何も決まっていません。

 建設費だけでなく、工事にかかる期間も大きな課題として横たわっています。羽田空港アクセス線は、東京オリンピックの開催決定を機に急浮上した構想といえますから、やはりオリンピックの開催までに完成させ、外国からやってくる観戦客の輸送に対応したいところ。しかしJR東日本によれば、整備に要する期間は10年とされており、いまから着手したとしても全てが完成するのは2025年です。東京オリンピックの開催には間に合いません。

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上野東京ライン(写真中央の高架橋)も羽田空港アクセス線の「東山手ルート」に乗り入れ可能(撮影:草町義和)。

 そのためJR東日本は、「暫定開業」も検討しています。これは、当面の整備ルートを臨海部ルートの1本に絞り、さらに東京貨物ターミナル~羽田空港間の新線も当面は空港旅客ターミナルビルの少し手前まで建設して「暫定駅」を整備するというもの。新たに整備が必要な部分をできるだけ減らして工事期間を短縮し、オリンピックの開催に間に合わせようというもくろみです。

 暫定駅から空港の旅客ターミナルビルまではシャトルバスなどで結ぶ必要があり、輸送力がそがれてしまいますが、オリンピックまでに整備するには、これが次善の策といえるでしょう。また、りんかい線沿線にはオリンピック開催時に多数の競技場が設けられる予定となっており、その点でも臨海部ルート1本に絞って整備するというのは理にかなっています。

 とはいえ、この暫定開業もオリンピックの開催に間に合うかどうか、やや不透明です。JR東日本は「実工期4年で整備が可能」としていますが、仮にオリンピック開催に間に合わせようとしたら、1年後(2016年春頃)までには工事に着手している必要があります。それまでに財源スキームの調整や手続きなど、事前の準備が順調に進むかどうかが、焦点のひとつとなるでしょう。

【了】

Writer: 草町 義和

鉄道ライター。鉄道誌『鉄道ファン』『鉄道ジャーナル』『鉄道ダイヤ情報』やニュースサイト『レスポンス』などで、鉄道の記事を多数執筆。著書に『鉄道計画は変わる。』『鉄道未完成路線を往く』など。

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コメント

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2件のコメント

  1. もうオリンピックにはどうあがいても間に合わない。
    諦めましょう。