LRTを日本で普及させるには? 固定観念から脱却しよう!

ヨーロッパの多くの都市では、LRTが街中を颯爽と走行する風景が当たり前です。アメリカや中国、東南アジアでもLRTの普及が進んでいます。どうして日本では普及が進まないのでしょうか。普及させるために固定観念から脱却することを提案します。

理想的なLRTを日本で普及させるための固定観念からの脱却

 私は日本において、海外とは異なる最先端のテクノロジーを活用し、徹底的に顧客志向を追及した理想的なLRTを普及させたいと願っています。そのために、4つの固定観念からの脱却を提案します。

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ドイツ、ブレーメンの風景(画像:Bombardier)

(1)お洒落な超低床車両こそ「LRT」

 LRTの本来の意味は、Light「軽い」(乗降りしやすい、低コスト、既存路線へ簡易に乗入れ等)、Rail「軌道系」(線路を走行する)、Transit「交通システム」です。

 ところが、関係者の間に「LRT=お洒落な超低床車両」との固定観念が広まり、LRTを高コストとし、かえって実現を遠のけています。例えば、20数座席で2億数千万円の超低床車両は1座席1000万円にもなり、5座席で1500万円のベンツより割高です。

 車両も駅もデザインが優れている方が良いに決っていますが、機能性の充実こそが第一であり、経済性とのバランス感覚が欠かせません。また、超低床車両は台車構造や機器配置が複雑となり、コストを増大させます。

(2)運転士の高能力が鉄道の安全を保つ

 LRTはバスと比べ、軌道を敷き架線を張る分、初期投資が大きいのは当然として、現状はさらに車両費と人件費も割高です。

 車両費は、過剰なデザイン性と超低床を見直し、またそのほかの技術革新により下げなければいけません。

 人件費が高いのは、運転士の免許基準が高過ぎるからです。明治の鉄道開業以来、鉄道は「運転士の高能力が安全を保つ」という発想が強く、確かに初期はそうでした。

 その後、保安システムや通信手段の充実とともに、バスやタクシーと比べ、低い訓練度の運転士が操縦しても同レベルの安全が達成される仕組みになりましたが、免許制度は昔のままです。その規制改革により、LRTの人件費は大幅に引き下げられます。

(3)安い運賃こそが庶民の味方

「公共交通は安くすべき、ワンコイン100円で提供すべき」といった声がよく出ます。

 一方、マイカー1台あたり購入費・税金・保険代・車検費・ガソリン代・駐車場費諸々で、贅沢せずとも年間80万円くらい掛かります。年間200日使ったとして1日4000円、片道2000円です。

 かたや2000円に対し100円の費用負担では、良質なサービスを提供できません。結果的に、社会として、高い費用負担で、渋滞を考えたら決して良質でない交通サービスしか選択されないこととなります。

 便利な交通サービスを実現するには経費を要しますが、相応の利用を見込め、人数で割算すれば片道2000円よりはるかに安くできます。ただし、100円にはなりません。「運賃は100円に」といった声がLRTの実現を阻んでいるのです。

(4)LRTは赤字事業

「LRTは黒字事業になるはずがない」と言われます。現に、日本以外で躍進の続くLRTの多くは、初期投資と運営費への税金投入が前提です。

 いずれも(1)~(3)の固定観念で運営され、しかもそれほど高サービスでなく、結果として出る赤字を税金で補填しています。(1)~(3)の固定観念から脱却し、かつ徹底的な高サービスを実現したら、多くの都市では初期投資を除いた運営段階では黒字事業とできます。

 例えば、(2)のために運転士人件費が高く列車運行1時間あたり運営費(運転士人件費+動力費・車両原価償却費・設備保守費等)が1.5万円だとします。片道20分の路線では1運行5000円です。(3)のために平均客単価100円だと、損益分岐点は乗車50人です。マイカーより遅い低サービスでは、乗車50人を得られず赤字となります。

 固定観念から脱却でき、運転士人件費が下がり列車運行1時間当り運営費が1.2万円となり、さらに高速走行で片道15分に短縮できれば、1運行3000円です。さらに平均客単価を150円に改められれば、損益分岐点は乗車20人となります。マイカーより速い高サービスなら、乗車20人以上を得られ黒字となります。

 LRTに関して周回遅れの日本において、固定観念から脱却し、理想的なLRTを普及させましょう。

【了】

Writer:

1961年東京生まれ。東大都市工学科卒。JR東日本に17年間勤務した後、(株)ライトレールを創業し交通計画のコンサルティングに従事。著書『満員電車がなくなる日(http://astore.amazon.co.jp/lightrail-22)』(角川SSC新書)。講談社「現代ビジネス」住みたい街2015にて【沿線革命(http://light-rail.blog.jp/archives/1014464871.html)】を連載。

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コメント

5件のコメント

  1. LRTが普及しないのは、各種費用もろもろもそうだが、それ以上に、「車の渋滞が激しくなる」と言って反対する人が多い。だから、日本では、普及しないのでは。

    車優先の社会だから。宇都宮市でも、それが理由で、反対する人が多い。

  2. LRTが普及すれば高齢者の軽自動車やミニバンの利用を減らすことができます。渋滞や事故の削減に役立つことは間違いありません。

    今後、日本中で確実に増加する交通過疎地域の対策にもなります。LRT無しの高齢化対策は厳しいものになるでしょう。

  3. 日本では未だに70年代のチンチン電車のイメージでしか路面電車を見ていないので、

    従来から路面電車がある都市以外ではなかなか難しいでしょうね

  4. 日本だと公営の鉄道事業で赤字出すと叩かれるからね

    道路を提供して赤字なのはいいのに公営の鉄道がちょっとやそっとでも赤字出すと思いっきり叩かれる

    住民に対するサービスと活性化促進のために赤字でも需要が見込める地域ならやるべき

  5. 少子高齢化に伴って、公共交通は運転士の人手不足という深刻な問題で、

    実際に路線バスでは運行本数の削減といったような弊害が出始めてしまっている。

    特に、京都では外国人観光客の増加も加わって定時性が損なわれ、人手不足もあってか委託していた京阪やJRバスの撤退が現実のものとなっている。京都が地下鉄ありきで市電を廃止したツケが今になって出始めている。少しでも残っていればLRT化はいくらか進めやすかったことを考えれば、惜しまれる。

    そういう意味で、今後の少子高齢化社会を支えるインフラに資するかどうかが、宇都宮ライトレールの成否にかかってくると思う。

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