魔物「マクハリ・ターン」 エアレース選手を苦しめた千葉の空

「マクハリ・ターン」を制するものが千葉を制す

「ポール・ボノムと戦うことが分かっていたので、チームとして全力で挑みました。100%で抑えられず、101%のちからを出してしまったので、オーバーGしてしまいました」

 室屋選手は失格になってしまったラウンド・オブ・8おけるレース展開を、このように語りました。

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「レッドブル・エアレース千葉 2015」のコース図(画像出典:Red Bull Air Race)。

「マクハリ・ターン」を素早く抜けるには、高いGが引き起こす「ブラックアウト」と呼ばれる視界喪失・失神に耐えながら、10Gを0.1Gもオーバーすることなく可能な限り制限Gに近づけるという、繊細な操縦が要求されます。

 その結果として、各選手のライン取りにおいても大きな差が生じました。上昇しつつターンし速度を落として旋回率を稼ぐ選手や(低速であるほど同じGを掛けた場合でも素早くターンできる)、できるだけ水平にターンし速度喪失を最小限にする選手など、機体特性にあわせた飛行をコンピューターによって解析し、それぞれ最適と思われるフライトをみせました。

 高速で折り返す二度の「マクハリ・ターン」は、レッドブル・エアレース千葉大会において、各選手の命運を分けた最大の見せ場だったのではないでしょうか。

 レッドブルおよび地元自治体ではまたこの千葉での開催を目指しており、きっと来年以降もエキサイティングなレースが展開されることになるでしょう。

 なお室屋選手は、初戦となるラウンド・オブ・14において50.779秒のコースレコードを叩き出しました。第2回レッドブル・エアレース千葉において、室屋選手が「マクハリ・ターン」を制し、表彰台の頂点に君臨する可能性は十分にあり得えます。

 レッドブル・エアレース次戦は、5月30日・31日にクロアチアのロヴィニで開催されます。千葉とは全くことなる周回トラックにおいて、室屋選手らがどのような健闘を見せるのかが注目です。

【了】

Writer: 関 賢太郎(航空軍事評論家)

1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。

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