空自も参加 世界最大級の演習「レッドフラッグ・アラスカ」実施 その意味は
「最初の10回」を越えて、生き延びるために
「レッドフラッグ・アラスカ」では空中戦に限らず、「撃墜」されたパイロットの捜索救難作戦も実施され、地上の整備員たちにも実戦と同じ環境で航空機を稼動状態に保つ任務が課せられます。特に今回は過去最多の600名にも達する空挺降下作戦が実施され、航空自衛隊のC-130輸送機にも各国混成の空挺隊員らが搭乗し、降下を行いました。
古今東西の航空戦において、戦死したパイロットのほとんどは初陣から10回目の出撃を迎えることなく撃墜されました。そして10回の出撃を生き延びた者はその後、格段に死亡率が下がることが統計上明らかになっています。その「最も危険な最初の10回の出撃」を実戦ではなく、限りなく実戦に近い演習でパイロットに体験させるという目的も、この「レッドフラッグ・アラスカ」にはあります。
なお航空自衛隊のF-15Jは、千歳基地(北海道)に駐留する第203飛行隊が派遣されました。しかしこれにはカラクリがあって、本来、第203飛行隊に配備されているF-15Jは全機「F-15SJ」と呼ばれる古いタイプの機体です。しかし今回は、より新しい電子機器を搭載する「F-15MJ」をほかの飛行隊から選り抜き、臨時に第203飛行隊の機体として派遣しています。
F-15SJとF-15MJは「ほとんど別の戦闘機」と言って良いほど性能に開きがあり、有効な作戦を実施するにはF-15MJが必須だったのではないかと推測されます。
また、航空自衛隊の「レッドフラッグ・アラスカ」への参加は今回が初めてではなく、昨今の安保法制を巡る審議とは一切関係がありません。
【了】
Writer: 関 賢太郎(航空軍事評論家)
1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。
いい勉強になりました。