玩具で訓練 新幹線運転士、その裏側と知られざる技

回送線で披露された新幹線運転士のテクニック

 今回、JR東海が実施した「東海道新幹線のおしごとを学ぼう」ツアーでは、通常は営業列車が走らない回送線を列車に乗って通過する体験も行われました。

 名古屋駅付近から車両基地(名古屋車両所・中村区)へ向かう日比津回送線には、途中で営業用の本線を乗り越えるための上り坂が存在。規程により、回送列車はちょうどその上り坂でいったん停車することになっています。

 そしてツアー参加者が乗った回送列車がそこを通った際、運転士のあるテクニックが発揮されていました。「坂道発進」です。

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日比津回送線を通過して車両基地へ。坂道発進に気付く乗客は皆無(2015年11月21日、末吉史樹撮影)。

 クルマでは「坂道発進」を行うとき、サイドブレーキをかけたままアクセルを踏むことで、車体がずり落ちるのを防ぐ操作が可能です。しかし、新幹線の車両はブレーキを完全に解除しないと加速できない仕組みになっています。そのため新幹線の「坂道発進」、少しでも操作のタイミングがずれると、列車は重さで後ろへ下がってしまうことがあるのです。

 この日、ツアー参加者を乗せた回送列車は、この「坂道発進」を完璧にクリア。乗っていた人は「坂道発進」をしたことすら感じていませんでした。

 これは、新幹線の運転士にとって当たり前にできなくてはいけない必須の操作だといいます。乗っている人には感じられませんが、それこそが、新幹線の運転士が高い運転技術を持つ証拠のひとつ、ともいえるでしょう。

【了】

Writer: 末吉史樹

小学校の校庭横をブルートレインが走り、上空をF4「ファントム」が飛ぶ環境で育つ。旅とグルメを愛し、各地の温泉やおいしい食べ物には目がない。

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コメント

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1件のコメント

  1. これ、トヨタが米国工場の作業教育にブロック玩具を使って、作業ライン全体の具体的なイメージをもたせるのと同様じゃないかな?