タイムリミット迫る!「しんかい6500」の運用期限 JAMSTECが訴える危機とは
日本の技術の粋を集めて建造された有人深海調査船「しんかい6500」。ただ、竣工から35年近くが経過しており、支援母船「よこすか」とともに老朽化が進行し、後継を新造するのか否かの岐路に立っています。JAMSTEC担当者にハナシを聞きました。
「しんかい6500」に匹敵する無人潜水艇を開発中!
文部科学省の深海探査システム委員会では、JAMSTECの河野健理事が「よこすか」について「現状では次の定期検査を乗り越えるのも難しい」との見解を示し、「若干の延命をした上で8000m級のAUV(自律型無人探査機)『うらしま』の改造版や『しんかい6500』の同時観測を可能とするような改造を施し、将来の新母船による複数機同時運用のノウハウを蓄積することを目指すのが現実的」といった意見を述べています。
桐生さんは「当然だが、『しんかい6500』を建造した当時の造船所の技術者はおらず、また、チタン合金製の耐圧殻を製造した神戸製鋼所の専用設備も撤去されたものがあるようだ。もし、また6500m級のHOVを造ろうとすると、本当にイチから技術者を集めて、建造に向けた設備投資をしなければならない」と説明していました。
「『しんかい6500』は、1983年に竣工した『しんかい2000』からの流れがあるが、今造るとなるといきなり6500m級のHOVになる。『しんかい6500』は当時の値段で約125億円かけて造られたが、今は資機材価格も人件費も上がっており、そこに対して投資すべきか否かは、無人探査技術の進展も踏まえて議論していく必要がある。そうした意味では技術を失いつつあり、建造が簡単ではないというのも事実かなと思う」(桐生さん)
文部科学省科学技術・学術審議会の海洋開発分科会は2024年8月に発表した提言「今後の深海探査システムの在り方について」の中で、「新たな大深度無人探査機を開発し、それが運用されるまでは『しんかい6500』を最大限活用する必要があるため、母船『よこすか』を含めた老朽化対策を最優先で進める」と明記していました。
ただ、「よこすか」は船体構造そのものが劣化しており、老朽化対策を行ったとしても長く使用することは困難です。「しんかい6500」を2040年代まで運用した上で、大深度無人探査機も導入しようとするなら、早急な代替船の建造が必要になる可能性があります。
ちなみに、深海探査システム委員会の方針では大深度無人探査システムを使っていく方向性です。ただ、「しんかい6500」は深海調査、ひいては海洋研究のシンボリック的な存在であり、これに憧れて新たに海洋分野を目指す若手もいることから、HOVのあり方については引き続き議論を継続していくとし、新造HOVの開発に関しては明言を避けました。
「ROV(遠隔操作型無人探査機)やAUVは複数機あるが、『しんかい6500』は1隻しかない。今後すぐに造れないという意味では、『しんかい6500』と『よこすか』をセットで考える必要がある」(松永研究企画監)
こうした状況のなか、JAMSTECでは、大深度HOVシステムの後継検討と並行して、1万1000mで調査可能な大深度無人探査機を開発中です。
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