やるぞ、水深1万m超でのサンプル収集! でも懸念が… 解決の糸口は最先端の日の丸エンジニアリングだ

日本の技術の粋を集めて建造された有人潜水調査船「しんかい6500」。ただ竣工から35年近くが経過しており、支援母船「よこすか」とともに老朽化が進行し、後継を新造するのか否かの岐路に立っています。JAMSTEC担当者にハナシを聞きました。

水深6000m以上潜れる無人探査機を早急に!

 国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)の有人潜水調査船(HOV)「しんかい6500」と、その母船「よこすか」の老朽化が深刻な状態です。

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JAMSTECが保有する有人潜水調査船(HOV)「しんかい6500」(深水千翔撮影)。

 代わりとなる新造船の建造も難しいなか、このままでは日本が誇る大深度HOVシステムが近い将来、運用できなくなりそうです。

 このたび、筆者(深水千翔:海事ライター)は詳細な状況についてJAMSTECにハナシを聞くことができました。今回は、インタビューの3回目になります。

 2024年11月現在、JAMSTECでは巡航型のAUV(自律型無人探査機)「うらしま」を水深8000mまで潜航可能にする改造を実施中で、将来的にはROV(遠隔操作型無人探査機)やその他のAUVを複数機組み合わせたシステムを構築し、深海の探査能力を強化していくことも検討されています。

 技術開発部の松永 祐研究企画監は「『しんかい6500』のような大深度HOVを簡単に造れないという事情を踏まえ、当面は無人探査機を高度化していく方向性になってきている」と話します。文部科学省の諮問機関である科学技術・学術審議会の海洋開発分科会も、2024年8月に発表した提言の中で、「しんかい6500」を活用しつつ、水深6000m以深の探査が可能なフルデプス級の大深度無人探査機を早期に開発すると明記しています。

 JAMSTECは、自律的に海中を観測するAUVと、母船とケーブルでつながっており機器の設置などの作業ができるROVの両方を保有しています。AUVは3000m級の「じんべい」と、前出の3500m級から8000m級に改造中の「うらしま」の2機。

 一方、ROVは3000m級の「KM-ROV」と4500m級の「ハイパードルフィン」「かいこうMk-IV」の3機です。このうち「KM-ROV」と「ハイパードルフィン」は海外製を購入し、所要の改造を施して運用しています。

 松永研究企画監は「近年、海外を中心とした石油業界では3000m級や4000m級のROVが製品化され、当たり前に使われ始めているため、この深度のROVに関しては、もはや私どもで開発する分野ではない」と述べていました。

「ただ、JAMSTECの研究は、海底に観測機器を設置したり試料を採取したりと、マニピュレータを持つROVの需要が高い。そのため、最初から船の装備品の1つという位置づけでROVもセットで買ってしまおうということで、2016年に竣工した海底広域研究船『かいめい』には『KM-ROV』と専用の着揚収システムを導入した。このように今は市販品でも使えるフェーズになってきている」(松永研究企画監)

【画像】狭ッ! これが「しんかい6500」の球体船室です

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