やるぞ、水深1万m超でのサンプル収集! でも懸念が… 解決の糸口は最先端の日の丸エンジニアリングだ
日本の技術の粋を集めて建造された有人潜水調査船「しんかい6500」。ただ竣工から35年近くが経過しており、支援母船「よこすか」とともに老朽化が進行し、後継を新造するのか否かの岐路に立っています。JAMSTEC担当者にハナシを聞きました。
7000m潜れてもケーブルが対応不可
しかし、今使っているROVの最大潜航深度は水深4500m止まりで、それより深いエリアでの探査は行えないのが現状です。
日本は1990年代に超大深度ROVの開発に取り組んでいました。かつては「かいこう」も1万1000mまで潜航可能なROVシステムでしたが、2003年に室戸岬沖でビークル(子機)が行方不明となってしまい、フルデプス級ROVとしての機能を喪失しました。
ちなみに「かいこう Mk-IV」の本体は水深1万1000mまで潜航できるものの、母船との間をつなぐ大深度用ROVのケーブルはコスト的にも技術的にも新規開発のハードルが高いことから現在は開発されておらず、現状では水深4500mまでしか対応できません。
また、同じく1万1000mクラスの潜航性能を持つ「UROV11K」のビークルも、2017年にマリアナ海溝のチャレンジャー海淵で行った潜航試験で失われています。
こうした経緯もあり、水深4500m以深のサンプルリターンなどはHOVの「しんかい6500」が一手に担うようになったのですが、こちらも2040年代には寿命を迎えると推定されています。
それでは今後、我が国の深海探査機はどのような道を歩もうとしているのでしょうか。松永研究企画監は「ROVに関しては、市販品は深くても6000m級 から 7000m級にとどまっており、その下が空白域となっている。私どもは、水深6500mより深いところで観測機能を充実させるための開発を行っている」と説明します。
深海の探査を行う場合、「1,電源が取れないこと」「2,陸上のような通信ができないこと」「3,可視光が届かないこと」この3つを考慮する必要があります。一般的なROVは太径ケーブルを通じて電力供給や通信を行いますが、探査エリアが深ければ深いほど、ケーブルの重量も増し、母船には専用のウインチといった大規模な設備が必要となるため、運用コスト面でもハードルは高くなります。
JAMSTECでは、こうした課題をクリアする新たな大深度無人探査機のコンセプトとして、海底設置型の観測機「ランダー」と小型のAUV「ビークル」で構成された「超深海作業型ビークルシステム」の開発を進めており、松永研究企画監は「太径ケーブルに依存しない形で6000m以深を目指す試みはアメリカや中国でも行われている」と述べていました。
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