やるぞ、水深1万m超でのサンプル収集! でも懸念が… 解決の糸口は最先端の日の丸エンジニアリングだ
日本の技術の粋を集めて建造された有人潜水調査船「しんかい6500」。ただ竣工から35年近くが経過しており、支援母船「よこすか」とともに老朽化が進行し、後継を新造するのか否かの岐路に立っています。JAMSTEC担当者にハナシを聞きました。
大深度無人潜水艇にはAIが必須! その理由とは
「超深海作業型ビークルシステム」では、まず洋上で母船から降ろされたランダーが海面から自由落下し、そのまま海底に着底します。続いてランダー内に格納されたビークルがそこから離脱し、カメラ等による海底マッピングや、試料の探索・採取といった調査を自律的に実施します。
なお、ランダーには大容量電源やビークルの測位システム、定点観測機器など重量物が装備されており、着底地点の採泥や周囲の撮影、ビークルの支援などを行います。調査が終わるとビークルはランダーに収容され、バラストを切り離して浮上、母船へと回収されます。
「超深海での無人観測は、高速音響通信とAI(人工知能)が開発の主軸だと考えている。最新の技術としてAIが進歩し実用化レベルになったことで、ようやくシステムの絵を描けるようになってきた」(松永研究企画監)
母船とランダーとの間は高速音響通信でつながっており、調査に必要な周囲の状況を船上でも確認できるようにします。JAMSTECはすでに「超深海作業型ビークルシステム」の「ランダー」に当たる海底設置型観測システム「FF11K」を使用した高速音響通信の試験を実施しており、水深9230mの海底で撮影した映像を母船に向けて2.5秒間隔で送信することに成功しました。
とはいえ、それでも通信には遅延が発生することから、船上から遠隔で全て操作を行わなくても深海で作業ができるシステムの構築が必要と説明していました。
松永研究企画監によると、音は水中では1秒間に1500mくらいしか進まないため、水深1万mだと往復13秒以上もかかってしまうのだとか。そうなると、例えば船上で情報を把握して指令を出しても、AUVにその指令が届いたときにはすでに次のポイントへ移動しており、その結果、障害物があればぶつかるし、面白いものがあっても通り過ぎてしまう懸念が大きいそうです。
そのため、やはりある程度、AUVが自分で考えて行動できるよう、AIを用いて、記憶している画像があったら止まる、障害物であると判断したら避けて新しい経路を生成してさらに調査を進めるなど、より高度な自律性を持たせないといけないと述べていました。
ほかにも、「超深海作業型ビークルシステム」は高速音響通信に対応していれば、専用の母船でなくても運用できるというメリットがあります。そのため今後は複数・多機種の同時運用を前提とした汎用性の高い着水揚収システムを備える、ROVとAUVの運用に特化した機能を持つ船舶も必要となってくるでしょう。
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