開発中の「うらしま8000」すぐ海にいきたいので既存船を使います! 驚愕の“時短レシピ”その中身とは?

日本の技術の粋を集めて建造された有人潜水調査船「しんかい6500」。ただ竣工から35年近くが経過しており、支援母船「よこすか」とともに老朽化が進行し、後継を新造するのか否かの岐路に立っています。JAMSTEC担当者にハナシを聞きました。

開発期間短縮のキモはソフトウェア

「探査機をより深く潜航させようとすると、耐圧容器の肉厚をより厚くする必要があるが、そうすると機体が重くなる。水中で重くなると一方的に沈むだけなので、それを中和するために浮力材を多く詰める。この相乗効果で、機体がどんどん大きくなってしまう。ある程度の大きさがある『うらしま』であれば、8000m級の耐圧性能を確保するために耐圧容器の肉厚を厚くし浮力材を増やしても、ある程度の観測装置を載せられる」(松永研究企画監)

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JAMSTECが保有する無人の深海探査機「うらしま」。JAMSTECでは1998年から開発を進め、現在では水深8000mまで対応できるよう改修中である(画像:JAMSTEC)。

 今回の改造では、耐圧容器や浮力材などを水深8000mに対応したものに変更。一方で、フレームやフェアリングといった、そのまま流用できるものは可能な限り活用し、制御ソフトウェアも改修は最小限に抑えます。これにより2022年度に基本設計を終えた後、2023年度から組み立てを行い、2025年度に最大潜航深度までの試験を行うという驚異的なスピードで開発が進められています。

「AUVはソフトウェアの信頼性が大事。ゼロから作り直そうとすると、バグ取りや健全性の確認などにすごい時間がかかる。『うらしま』にはこれまでの実績があり、基本的なソフトをそのまま8000mにカスタマイズすることで、運用の検証に割くスケジュールを大幅に削減できる」(松永研究企画監)

「うらしま」の改造は、日本海溝の最深部8020mをターゲットにしており、地震発生帯の調査や詳細な海底地形図を作成することで、地震の研究や海底資源の活用につなげていくことが考えられています。

 世界第6位という広大なEEZ(排他的経済水域)を持つ日本にとって、自国周辺の海の姿を明らかにすることは、安全保障、経済、防災などさまざまな観点から非常に重要なことです。8,000m級に改造することで、なんと日本のEEZの約98%にアクセスすることができます。この深さまで潜航可能なAUVは世界的にもごくわずかしか存在しません。

「しんかい6500」に続く大深度探査システムがどのようなものになるのか。私たちはもっと注目していく必要があると、今回JAMSTECを取材して感じました。

【積載スペースそこ!?】無人深海探査機「うらしま」の運用イメージ

Writer:

1988年生まれ。大学卒業後、防衛専門紙を経て日本海事新聞社の記者として造船所や舶用メーカー、防衛関連の取材を担当。現在はフリーランスの記者として活動中。

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