「尻から燃料バッシャーン」 ロシア機の驚愕作戦には“先祖”がいた? 「世界初の可変翼戦闘機」の不思議な特技とは

世界で初めて実用可変翼を導入した戦闘機「F-111」は、ロシア軍が無人機に行った“驚愕の作戦”にも共通する、変わった特技を持っていました。どういったものだったのでしょうか。

F-111&ロシア機の「トーチングの違い」

 日本でも航空自衛隊の曲技飛行チームブルーインパルスが、かつてT-2練習機で離陸時に炎を引くことはありましたが、F-111の「トーチング」は比べものにならぬほど長く、機体の全長をしのぐ炎は迫力満点でした。

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F-111の「トーチング」の様子(島田 駿撮影)

 ただし、この「トーチング」が実戦で役に立ったかというと「ノー」でした。

 というもの、追い抜きざまに燃料を浴びせても、相手が戦闘機だったなら前に出た途端に撃ち落されていたはずです。また、たとえ炎が長くても、相手へ非常に接近しなければならず、自機を損傷させる恐れもあるだけに、危険なのは明らかでしょう。

 対し、現代の黒海上空の事例で、ロシア軍機が燃料を浴びせることに成功したのは、武装していない無人偵察機が相手ゆえにできたということになります。

 F-111で結局「トーチング」が有効だったのは、航空ショーなど観客のいる場だけでした。可変翼を最前進させ車輪を降ろして低速で飛んだり、主翼の角度をできるだけ後退させた状態へと変形し、高速を出したりしましたが、どちらの速度でも炎を吹いて飛ぶ姿は確かに迫力のあるもので、会場は沸いたものです。

 そうしたF-111の「トーチング」が最も注目されたのは、2000年のシドニー五輪の閉会式だったといえるでしょう。

消える聖火を空へ運ぶようにF-111が炎を引いて飛んでいく光景は、ほかの戦闘機では演出できなかったでしょう。F-111自体は航空ファンの記憶に残る機体となったほか、「トーチング」でこそ戦績を残すことはなかったものの、アメリカ空軍で湾岸戦争でも出撃するなど戦歴を残しています。

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