放火から約1年、新幹線の安全は 進む対策、難しい現実
2015年6月に発生した新幹線車内での放火事件を受け、JR東海が列車火災を想定した訓練を実施しました。その事件から1年近くが経過したいま、日本の鉄道における安全対策はさまざまな面で進化しています。ですが、あわせて限界も見えているかもしれません。
新幹線車内で焼身自殺を図り、2人が死亡
JR東海が2016年5月10日(火)、東海道新幹線の静岡~掛川間で避難誘導訓練を行いました。営業列車の運行終了後に行われたこの訓練、そのシナリオは次のようなものです。
「静岡~掛川間を走行中の下り『のぞみ号』車内、4号車デッキで原因不明の火災が発生し、乗客が非常ブザーを押す。それを確認した運転士はマニュアルブレーキで列車を停止させるが、その際、運転士がデッキに設置されている防犯カメラの映像を通して火災であることを確認したため、トンネルや橋を避けて停止させた」
「そして車掌が、新幹線に搭載されている防煙マスク、防火手袋を使って初期消火を試みるが困難であったため、はしごを使って乗客を車外へ誘導。バスで最寄り駅へ送る」
昨年2015年6月30日、東京発新大阪行きの東海道新幹線「のぞみ225号」車内で発生した放火事件を受けて作られたシナリオです。
車内に火を放って焼身自殺を図った男と、巻き添えになった女性ひとりが亡くなり、鉄道会社、そして社会に大きな衝撃を与えたこの事件から、もう少々で1年。この1年で対策はどこまで進み、「鉄道の安全」はいま、どうなったのでしょうか。
ちなみに、訓練で「トンネルや橋を避けて停止させた」のは、火災時にトンネル内で停車すると煙が車内に充満し危険なことと、避難のしやすさを考慮したためです。
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