放火から約1年、新幹線の安全は 進む対策、難しい現実

2015年6月に発生した新幹線車内での放火事件を受け、JR東海が列車火災を想定した訓練を実施しました。その事件から1年近くが経過したいま、日本の鉄道における安全対策はさまざまな面で進化しています。ですが、あわせて限界も見えているかもしれません。

限界がある安全対策の現実 そこで何ができるのか?

 事件後のおよそ1年でさまざまな対策が行われ、その安全性が高まっているのは事実でしょう。ただ、過信できるものではないのも事実です。手回り品のルールが改められましたが、乗車前に手荷物検査があるわけではありません。

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ドーバー海峡を海底トンネルでくぐり、ヨーロッパ大陸とイギリスを結ぶ高速列車「ユーロスター」(2016年4月、恵 知仁撮影)。

 イギリス・ロンドンとフランス・パリなどを結ぶ国際高速列車「ユーロスター」では、乗車前に手荷物検査があります。しかしその運行本数は1時間に片道3本程度で、1列車の定員は766人、年間の輸送人数は1010万人(2013年)です。

 対し、たとえば東海道新幹線は1時間あたり片道最大15本の運行が可能で、1列車の定員は1323人。年間で1億5700万人(2014年度)を輸送しており、仮に手荷物検査を行うとすれば、検査設備の設置はもちろん、その場所の確保、乗客をさばききれなくなる、といった問題が発生するでしょう。

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発車が近づくまでホームに入れない「ユーロスター」(2016年4月、恵 知仁撮影)。

 日本の鉄道における安全対策は特にこの1年、確実に進歩し、訓練も行われています。しかし先述の通り、過信はできません。

 今回の訓練で、JR東海の新幹線鉄道事業本部・古橋智久運輸営業部長は次のように述べました。

「お客さまには冷静なご対応をお願いしたいです」

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スイスを走る列車内で見かけたネームタグつきの手荷物(2016年4月、恵 知仁撮影)。

 フランスの鉄道では手荷物検査がなくとも、車内へ持ち込む荷物へは住所や氏名を記したタグをつけることが義務づけられています。2016年4月に筆者(恵 知仁:鉄道ライター)がヨーロッパの鉄道に乗った際、フランスに限らず、ネームタグがつけられた荷物をしばしば見かけました。

「絶対」の対策が難しいなか、鉄道、そして日本が安全であるために、利用者側も冷静な対応を心がける、そして、たとえば荷物に関しては普段から不審物と思わせないようにする、不審物に注意するなど、それぞれが危機に対する「意識」を高めていくことが今後、重要なのかもしれません。

【了】

Writer:

鉄道を中心に、飛行機や船といった「乗りもの」全般やその旅について、取材や記事制作、写真撮影、書籍執筆などを手がける。日本の鉄道はJR線、私鉄線ともすべて乗車済み(完乗)。2級小型船舶免許所持。鉄道ライター/乗りものライター。

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