車窓が特殊すぎる!? 私鉄の「殺風景を楽しむ電車」とは? 終点もちょっとヘン!

全長が10kmに満たない鉄道路線で、「夜に電車で行き来する」という企画が10年超も続いてきました。ロングランの人気を探ろうと乗り込むと、首をかしげる光景の駅に行き着きました。

だって工場地帯なんだもん

 全長が10kmに満たない鉄道路線で、「夜に電車で行き来する」という企画が10年超も続いてきました。ロングランの人気を探ろうと乗り込むと、首をかしげる光景の駅に行き着きました。

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運行中の岳南電車の8000形(大塚圭一郎撮影)

 JR東海道本線の吉原駅(静岡県富士市)から分岐する全長わずか9.2kmのミニ私鉄が岳南電車です。親会社の岳南鉄道を含めて富士急行のグループ企業になっています。ともに旧京王帝都電鉄(現・京王電鉄)の旧3000系(現・7000形、8000形)や旧初代5000系(現・9000形)が活躍し、鉄道ファンからの人気が高いものの、地元以外の注目度は高くありませんでした。

 というのも、製紙工場や自動車部品工場などがひしめく工業地帯を縫って走り、沿線には集客力のある観光名所がないためです。

 そんな制約を跳ね返し、沿線の工場を”観光名所”に一変させた立役者が「夜景電車」です。吉原―岳南江尾の全線を往復してライトアップされた工場の夜景を眺めるユニークな企画で、2014年の本格開始から10年超も続いてきました。原則として月に2日開催し、参加費は1日フリー乗車券などが付いて大人1300円、子ども700円です。今後は7月19日土曜、8月16日土曜にそれぞれ1往復する予定です。

 筆者(大塚圭一郎:共同通信社経済部次長)が参加したところ、電車は「まるで中間駅」のようなプラットホームに滑り込みました。そこには歴史的な背景がありました。

車内を真っ暗にして楽しむ夜景 もう1両は照明ONのまま

「5、4、3、2、1、消灯!」

 車内放送でのカウントダウンとともに、吉原を19時43分に出発した岳南江尾行きの8000形電車の2両のうち、進行方向から2両目の車内を暗闇が包みました。車窓の工場夜景が映えるために車内を暗くし、開いている窓から撮影できるようにしているのです。一方、1両目は通常の定期列車として運用しているため、照明が付いたままです。

 筆者が参加した6月21日の「夜景電車」には50人が参加し、家族連れの参加が目立ちました。この日は夏至でしたが、19時3分の日没の後だったため夜のとばりが既に降りていました。

 車内放送での案内役を務めた岳南電車鉄道部運輸区主任の藤咲拓也さんが「夜景は外にありますので、ひざ立ちで外側をご覧いただくことをお薦めします」と呼びかけると、参加者は靴を脱いでロングシートに膝立ちして窓の外をのぞき込みました。

【キレイな風景ありません…】これが「殺風景を楽しむ電車」です!(写真)

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