ゴミ収集業界を悩ませる“リチウム電池”…なぜ?危険すぎて「収集車変えざるを得ない」状況も

繰り返し充電でき、持ち運びも便利なリチウム電池は今や様々な電化製品に使われています。しかしこれらの製品は、ゴミ収集や資源回収の現場で大きな問題となっています。

あまりに危険すぎてパッカー車をやめる業者も

 主に板橋区内で資源回収を行っている千葉商店株式会社の千葉 仁(ちば じん)社長は「段ボールなどの資源に関してもたまに(リチウム電池が)紛れていることがあります」と話します。

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リチウムも含み、これらのマークが記載されている製品は、他の廃棄物との分別をしなければいけない(画像:豊橋市)

 資源で段ボールを外に出す場合、大きな段ボールや資源回収用の箱の中に他の段ボールを畳んで差しておくことがよくあります。この段ボールのなかに、なぜか小型のリチウムイオン電池などが紛れていることがあるそうです。

「ちゃんと中身を調べずに、知らずにパッカー車でまとめて潰して、発火してしまったという話も聞いたことがあります。私たちのところでも実際に段ボールの中にバッテリーがあることを発見し、ヒヤッとした経験もあります」(千葉さん)

 千葉さんも会社では段ボールのほかにも、マンションの廃棄物処理など個別の依頼などで、ゴミなどの回収を行うこともあります。その際はやはり、可燃ごみ、不燃物両方に混じるリチウムイオン電池の確認は大変とのことです。

「モバイルバッテリーのような目立つものだけでなく、どんな製品にも今はリチウムが使われています。例えば、歯ブラシのバッテリーも今はリチウムであるものが多いですし、小さい手持ちの扇風機なども使用しています。こうしたものをひとつひとつ確認して、車両に詰め込まないといけません」(千葉さん)

 仮にパッカー車の中で炎上してしまった場合、コンテナの中から消火する手立てはなく、消防の協力で消火できたとしても、そのクルマは使用できなくなります。パッカー車は小型の場合でも400〜600万円、中型、大型になればそれ以上の値段がかかり、大きな損害になる上に作業員も危険にさらされます。

 幸いにも車両が炎上しなかったとしても、ゴミ収集の現場におけるリチウムイオン電池の危険性はこれだけではありません。ゴミの集積場や資源回収センターで燃えるというケースがあるのです。

「リチウム電池が衝撃を受けて、パッカー車のなかでくすぶっているというケースがあります。その場合、処理場で水や空気に触れて激しく燃えてしまいます。実際に処理場が火災に見舞われたケースも聞いたことがあります」(千葉さん)

 どこにリチウムイオン電池があるか分からないということで、不燃物の回収車では、パッカー車を使用せずに平トラックを使う業者も増えているとのことです。

「危険があるなら、『パッカー車を諦めよう』と考えるところも多いですね。手間は増えますが、確実なので」(千葉さん)

 リチウム電池に関する火災などの問題を減らすには、最初に捨てる人の確認が必要です。リサイクルマークに加え「リチウムイオン電池」の表記があった場合は、自治体のホームページなどを確認するのが一番確実です。

【画像】こうなっているのか! これがパッカー車のプレス機です

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