目の前に「日本人が行けない日本」がある!“最果てのバス停”はどんな場所なのか 実際に訪れてみた

日本最東端のバス停は北海道根室市にあります。最果てを感じさせる場所であると期待して訪れてみたところ、意外な光景が広がっていました。

本土の「目と鼻の先」が不法占拠されていた

 豊かな自然が感じられる納沙布線ですが、同線が通る道道35号線の沿線には約200人(2023年12月31日現在。以下同)が暮らす友知や双沖(ふたおき)、約400人が暮らす珸瑤瑁(ごようまい)といった町が点在しており、停留所もこまめに設置。最果ての地へ向かう路線のため、段々と人里離れた場所へ向かうのかと思いきや、車窓には漁港や郵便局、神社やお寺が次々と出現し、人々の生活が感じられます。

 約600人が住む沿線最大の町である歯舞には8つの停留所が設置され、歯舞郵便局前停留所の近くには北海道ご当地コンビニ「セイコーマート」があり、買い物に困ることはなさそうです。ちなみに根室半島一帯は根室市ですが、1959年の合併までこの地は「歯舞村」で、北方領土の歯舞諸島は同村の一部でした。

 さて、途中停留所で乗降がないまま走行したバスは、定刻9時4分に終点の納沙布岬停留所へ到着しました。

 一帯には「根室市北方領土資料館」や「北方館」といった資料館や土産店、北方領土返還を願うモニュメントが点在し、やはり最果ての地、最東端といった雰囲気はやや薄い印象です。それでも海を見渡せるポイントに立てば国後島や歯舞諸島の水晶島が見え、想像以上に北方領土は北海道から近いのだということがわかります。

 納沙布岬からわずか3.7kmの海域には、1937年に日本が建設した貝殻島灯台がありますが、この灯台までロシアが実効支配しており、ここが最も近い北方領土となっています。本土の「目と鼻の先」にある場所を、実質ロシアにされてしまっている状態が続いています。

 ちなみに、2月7日は「北方領土の日」として定められています。この日は1855(安政元)年に静岡県の下田で日魯通好条約が調印され、平和的な話し合いのもとで北方4島(択捉〈えとろふ〉島、国後島、色丹〈しこたん〉島、歯舞諸島)が日本領であることが両国で確認された日となっています。

 このように、日本最東端の停留所周辺は、人気のない自然に囲まれた場所ではなく、人々の生活を感じることができ、外国人も訪れる観光地ともなっていました。また、未だ復帰の目途が立たない国土に思いを馳せる場所でもあります。

 なお、折り返しのバスは9時55分発。筆者は次の取材のため同便でバスターミナル方面に引き返しましたが、周囲を見て回るにはやや時間がたりないと感じました。その次の便は12時40分発なので、約3時間30分の滞在で、資料館の展示や納沙布岬灯台などをしっかり見学し、昼食を食べてから戻れるでしょう。

 ちなみに9時55分発の便では、珸瑤瑁局前、双沖入口、友知の各停留所で1人ずつ乗車。根室の市街地へ行く地域の足としての役割をきちんと担っている姿も見て取れました。

【画像】「日本人が行けない日本」が見える!これが「最果てのバス停」です

Writer:

レイルウェイライター種村直樹氏に憧れ鉄道・バスライターを志す。これまで「バスマガジン」や「Rail Magazine」で執筆。現在はモビリティ全般に興味を広げ、ドローンや空飛ぶクルマの記事も。国家資格「一等無人航空機操縦士」所持。近著に「ドローン3.0時代のビジネスハック」ほか。

最新記事

コメント