「“軍艦の象徴”が無ェ!!」米海軍の新型なぜ“ツルツルすぎる”姿に? 数百年ぶりに「艦砲なし」の可能性
アメリカ海軍では、既存の駆逐艦および巡洋艦を置き換える新型水上戦闘艦「DDG(X)」の建造計画が進められています。じつは、海外メディアの報道によると、DDG(X)には艦載砲が搭載されていないといいます。その理由は一体何なのでしょうか。
艦砲無しでどう戦う!? 世界の海軍が注目するその行方
ただ、艦砲の砲弾はミサイルより価格が安く、常備弾を打ち尽くした後の再装填も容易であることから、小口径砲は艦船の重要な兵器であり続けてきました。また21世紀前半にかけては、対テロ戦などの非正規戦における有効な対地攻撃の手段として評価され、その時期に開発されたもがみ型護衛艦などの水上戦闘艦は、艦のサイズからすると不釣り合いなほどの大口径砲を装備しています。
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もしもDDG(X)が直近のイメージイラスト通りに実用化されるとすれば、数百年ぶりに艦砲を装備しない水上戦闘艦が出現することになります。
仮にそうなった場合、考えられる理由はいくつか挙げられるのですが、一つはDDG(X)が、既存の艦載レーザーよりもはるかに強力で、自艦を攻撃してくるドローン対艦ミサイルなどの迎撃も可能な、出力600kw級のレーザー兵器の装備を前提としているためなのではないかと考えられます。
現在の水上戦闘艦は対艦ミサイルなどの迎撃に、艦砲と機関砲や短射程ミサイルを使用する近接防御兵器を使用していますが、DDG(X)はこの任務を高出力レーザー兵器に代替させることを志向しています。
また、前に述べたように、DDG(X)の最新のイメージイラストでは、過去のイラストで砲塔のあった位置にVLSが描かれています。このVLSは2022年のコンセプト発表時に明言されていた、現用のMk.41より大型にもののように見えますので、ここから直径の大きいミサイルを発射して、対地攻撃手段を行うという考えなのかもしれません。
2022年の時点で、DDG(X)の1番艦は2028年の建造開始を予定していましたが、アメリカ海軍のマイケル・M・ギルティ前作戦部長は2023年2月に、レーザーなどの新技術が熟成するまで、DDG(X)の設計と購入のペースをスローダウンすると述べており、1番艦の建造開始は2030年代までずれこむ可能性があります。
その間、DDG(X)のコンセプトは何度も変化していくと思われますが、本当に艦砲を装備しない水上戦闘艦となるのか否かは、世界中の海軍から注目を集めそうです。
Writer: 竹内 修(軍事ジャーナリスト)
軍事ジャーナリスト。海外の防衛装備展示会やメーカーなどへの取材に基づいた記事を、軍事専門誌のほか一般誌でも執筆。著書は「最先端未来兵器完全ファイル」、「軍用ドローン年鑑」、「全161か国 これが世界の陸軍力だ!」など。
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