え、ここに「駅そば」が!? 長大ローカル線の最果て駅で営業する“幻の駅そば店” 密着で見えた意外な顔

首都圏から鉄道を乗り継いで2時間半、埼玉の“最奥”の終着駅にも、駅そば店があります。ただ営業日は限られることから“幻の駅そば”の異名も。密着取材してみると、その印象はだいぶ違ったものでした。

SL運行日だけ営業する“幻の駅そば店”

※本記事は『駅食大全2025 駅弁・駅そば・駅ナカグルメの最前線!』(「旅と鉄道」2025年増刊3月号)掲載の内容を再編集したものです。

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三峰口駅そば店。そば・うどんのつゆは、群馬県の正田醤油を使用(嘉屋剛史撮影)

 東京の都心から鉄道を乗り継いで約2時間半。埼玉県最西端の駅である三峰口駅(秩父市)は、奥秩父連山の険しい山々を背にした秩父鉄道の終着点です。山々によって鉄路をこれ以上延ばすのが難しい場所にあり、終着駅ならではのムードを漂わせています。

 駅には、1930(昭和5)年に開業して以来の木造平屋の駅舎が立ち、堂々たる風格を感じさせます。「関東の駅百選」に選ばれた名駅舎として、鉄道ファンの間ではおなじみ。その駅舎の改札口を抜けて左手に目を向けると、木造のベンチが並ぶ待合スペースの奥に、「三峰口駅そば店」の小さな店舗がひっそりと佇んでいます。

 この駅そば店は、秩父鉄道の観光列車「SLパレオエクスプレス」の運行日に合わせて営業しています。SLの運行日は土曜・日曜・祝日を中心に年間約90日程度。営業日が限られるため、一部では“幻の駅そば店”とも呼ばれています。

「SLが到着して停車している時間が、いちばん混雑します」と語るのは、この店で15年にわたり働いている店員の関本正代さん。SL時間帯以外にも、周辺の山々を目指す登山客が腹ごしらえに利用するそうです。

 店で提供されるそば・うどんは、すべて手作り。小さな店でありながら、つゆを作ったり天ぷらを揚げたりと、関本さんはあらゆる業務をこなしています。

「朝9時の営業開始に向けて、私は早々に店に入ります。天ぷらの具材を刻むことから仕込みを行い、開店に間に合うよう準備を進めます」。

 そば・うどんには、地元・秩父市にある「せきた食品」の麺を使用しています。秩父の天然水を使ったこの麺は、現在の天皇陛下が皇太子時代に秩父を訪れた際に召し上がったことがあるという逸話も。メニュー表には「令和の天皇陛下献上 せきたの特挽地そば」と記載されています。

【珍トッピング!】これが“幻の駅そば店”の一番人気メニューです(写真)

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