え、ここに「駅そば」が!? 長大ローカル線の最果て駅で営業する“幻の駅そば店” 密着で見えた意外な顔

首都圏から鉄道を乗り継いで2時間半、埼玉の“最奥”の終着駅にも、駅そば店があります。ただ営業日は限られることから“幻の駅そば”の異名も。密着取材してみると、その印象はだいぶ違ったものでした。

観光客と地元客、注文ですぐわかる!?

 うどん・そばのオーダー比率は地域により違いがありますが、関東ではそば派が主流です。ところが秩父に限っては、うどん派が多いのだとか。「そばを頼むのは観光客、うどんを頼むのは地元の人。注文をうかがってお客さまを見分けることができます」と、関本さんが微笑みます。

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待合スペースの奥にある「三峰口駅そば店」(嘉屋剛史撮影)

 小さな店であっても、そば・うどんのメニューは充実しています。店のイチオシメニューは、地元の味を存分に楽しめる「しゃくしなそば・うどん」。秩父の家庭で古くから親しまれてきた漬け物「しゃくしな漬」の油炒めに、あおさの揚げ玉、わかめ、ネギをトッピングした一杯です。

しゃくしな漬のほどよい甘辛さがそば・うどんに絶妙にマッチし、食欲をかき立てます。この漬け物は単体でも販売しており、お酒のお供として購入する人もいます。

 そば・うどんだけでなく、秩父のB級グルメ「みそポテト」も提供しています。ふかしたジャガイモを天ぷらにして甘めの味噌ダレをかけた一品で、地元では子どものおやつとして親しまれてきました。これも店内で揚げているそうです。

駅そばだけど…観光案内所も顔負け!

 三峰口駅は、関東屈指のパワースポット「三峯神社」の玄関駅です。駅前から神社へ向かうバスが運行し、アクセス拠点となっています。近くには、渓谷の絶景を眺めながらバンジージャンプや吊り橋散策を体験できる「秩父ジオグラビティパーク」があり、こちらは若者に人気です。

 そんな駅を訪れる観光客に対し、関本さんは積極的に声をかけ、近隣の観光スポットを紹介して回っています。「駅の中に観光パンフレットがあるので、手に取ってくださいね」と声をかけることもしばしば。まるで観光案内所のスタッフのようです。

 観光客の相手がひと段落すると、今度は地元の人々と店舗の前のベンチで歓談。どこにでもある田舎の日常が見られ、のんびりムードが漂います。取材時には、地元の方が持参した梨を関本さんが店内で切り分け、筆者にも振る舞ってくれました。関本さんのフレンドリーな人柄が、この場所の魅力をいっそう引き立てています。

“幻の駅そば店”とも言われる三峰口駅そば店ですが、地元と観光客をつなぐハブのような場所でした。その親しみやすい空間や名物メニューは、秩父の旅に一味添えてくれる存在です。

【珍トッピング!】これが“幻の駅そば店”の一番人気メニューです(写真)

Writer:

1979年生まれ、東京都出身。早稲田大学政治経済学部卒業。編集プロダクション「美和企画」の編集者として、旅行や歴史、日本刀などの雑誌、ムック、学習教材を手がけている。

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