大幅遅れの北海道新幹線「札幌開業」 その影響は全国に波及? 道内だけじゃない「振り回される」お金と計画
北海道新幹線の新函館北斗~札幌間の建設工事が続いています。当初2035年度とされていた開業予定はその後二転三転しており見通しは不透明ですが、周囲への影響は甚大です。並行在来線だけでなく、ほかの整備新幹線も影響しそうです。
JR東日本や整備新幹線も影響大
北海道新幹線に乗り入れるJR東日本も無関係ではありません。同社は札幌開業に向けて東北新幹線の最高速度を320km/hから360km/hに引き上げるための高速試験車「E956形(ALFA-X)」を製造し、走行試験を重ねています。
JR東日本は2025年3月4日、東北新幹線の次世代車両「E10系」を2030年度に導入すると発表しました。本来であればこの車両が360km/hに対応する予定だったと思われますが、最高速度は320km/h止まり。北海道新幹線への対応は「E10系をベースに、別途検討する」としています。
また、整備新幹線区間の盛岡~新青森間の最高速度を320km/hに引き上げるため、防音壁、吸音板、ドンネル緩衝工の延伸など騒音対策を追加する工事を進めていますが、これらの高速化施策を札幌開業と切り離して進めるのかが注目されます。
もうひとつの大問題が、今後の整備新幹線計画への影響です。軟弱地盤や岩塊に対処するために新技術や新工法を導入すれば、工期と工費に影響します。また、近年の資材・人件費高騰は今後も続くとみられ、工期が延びるほど工費も増大します。
新函館北斗~札幌間の事業費はすでに、当初想定より約6500億円高い2兆3000億円規模になる見通し(2024年度政府予算案)で、今後さらに増大する可能性も否定できません。
整備新幹線の事業費は、営業主体(ここではJR北海道)が受益の範囲で支払う貸付料を充てた上で、残りを国と地方が負担します。このうち国が公共事業費として負担する費用の財源は、既設整備新幹線の貸付料であり、政府の財政状況を踏まえれば大幅な増額は望めません。
整備新幹線関係予算は2030年まで「予約済」ですが、札幌開業が遅れて追加の資金が必要になれば、残る北陸新幹線敦賀~新大阪間の着工が財源不足で遅れる事態となります。
Writer: 枝久保達也(鉄道ライター・都市交通史研究家)
1982年、埼玉県生まれ。東京地下鉄(東京メトロ)で広報、マーケティング・リサーチ業務などを担当し、2017年に退職。鉄道ジャーナリストとして執筆活動とメディア対応を行う傍ら、都市交通史研究家として首都圏を中心とした鉄道史を研究する。著書『戦時下の地下鉄 新橋駅幻のホームと帝都高速度交通営団』(2021年 青弓社)で第47回交通図書賞歴史部門受賞。Twitter:@semakixxx
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