え、「スホーイ」「ミグ」は軍用機を造らない!? 特殊過ぎるロシア航空産業の現状とは
世界屈指の航空機生産体制を持つロシアですが、他国とは異なる産業構造を擁しています。例えば「スホーイ」や「ミグ」といった名門メーカーは自前の工場がないのだとか。どういうことでしょうか。
アメリカに次ぐ航空機生産大国
ロシアによるウクライナ侵攻が始まってから3年が経過しましたが、ロシアの戦闘機産業は、いまだアメリカに次ぐ規模を誇ります。

世界屈指の航空機生産体制を持つ同国において、特に有名なメーカーが「スホーイ」と「ミグ」でしょう。冷戦期から続くこれら名称は、世界中の航空ファンや軍事専門家にとって馴染み深い存在です。
しかし、意外なことに、スホーイやミグは戦闘機を「生産」しているわけではありません。彼らは航空機メーカーでありながら自前の工場は持っておらず、別会社で生産しています。
旧ソ連時代、スホーイとミグは、いわゆる「設計局(OKB)」と呼ばれた航空機の設計・開発を担う部門でした。つまり、新型戦闘機のコンセプトを考え、設計し、性能試験こそ行うものの、試作機の製造や量産は別セクションが担当していたのです。この体制は、ソ連が崩壊し、ロシアになっても独特の分業制度として残り続けています。2025年現在も、スホーイやミグが設計した航空機は別々の工場で、それぞれ機種が重複しないよう製造されています。
具体的には、以下の4か所です。
・コムソモリスク・ナ・アムーレ航空機工場(KnAAPO・KnAAZ)
ロシアで最大規模を誇る航空機工場であり、極東ロシアに位置します。ロシア空軍の主力戦闘機であるSu-35Sや第5世代戦闘機Su-57を生産しており、かつては中国向けSu-30MKKも生産していました。ゆえに今、最も注目されている戦闘機工場です。またロシア製旅客機「スホーイスーパージェット100」の生産ラインも存在します。
・イルクーツク航空機工場(IAZ)
バイカル湖に近いイルクーツクにあるこの工場では、ロシア空軍向けや輸出市場で高い人気を誇るSu-30MKI/Su-30SMシリーズや、新型練習機Yak-130などを生産しています。Su-30SMはフランカーシリーズの中で最も多く生産されたバリエーションの1つであり、インドやアルジェリアなど多くの国々で採用されている戦闘機です。新型旅客機MC-21の生産も行われます。
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