SF世界の到来は間もなく? 米空軍が「無人戦闘機」プロジェクトを本格化へ 従来ドローンとは段違いの差です
米空軍はこのたび、調達予定の試作無人戦闘機2種の型式名をYFQ-42AとYFQ-44Aに指定したと発表しました。これらが、従来の無人機と大きく異なるのは自律能力があるという点だとか。そのメリットをひも解きます。
CCAの意外なメリットとは?
また、レーダーや電子戦装備を搭載し、戦場を索敵したり敵の通信やレーダーを妨害したり、といったことも考えられます。こうした任務は電波を出すため、敵から逆探知されるリスクを併せ持っていることから、隠密性やステルス性を損なう恐れがありますが、無人機であれば比較的容易にそのリスクを負うことが可能となるでしょう。また、得られた情報は有人戦闘機のパイロットに提供され、戦術決定をサポートします。

さらに、CCAにおける最大の利点に挙げられるのが、「訓練飛行が必要ない」という点です。有人戦闘機を操縦するパイロットは、おおむね年間200飛行時間の飛行訓練が必要とされます。この訓練時間は今後もそれほど変わらないと見込まれているため、空軍は1人のパイロットを育成するために、極めて高額な運用コストを支払わなくてはなりません。しかし、CCAならその必要がなく、ほかの装備品と同じく普段は一定数を無可動状態で保管しており、有事の際は短期間で一挙に機数を増やすといったことも可能です。
交戦を可能とするCCAはかなり高機能であるため、無人機といえども有人戦闘機と比べて大幅に安価となることは期待できませんが、前述したように普段は飛ばさずしまっておくことで、トータルコストをかなり低減させることはできるでしょう。
CCAは多くの利点をもたらすため、アメリカ空軍では少なくとも1000機を提供することを目指しています。なお、このような無人戦闘機はアメリカ以外の国々でもプロジェクトが進行中なので、2025年現在こそ有人戦闘機に比肩するほどの能力を持つ機体は存在しないものの、その実現はもはや時間の問題です。
とはいえ、これまで小説やアニメ、漫画などで描かれてきた完全自律飛行する「無人戦闘機」は、まだ障壁が多いため、その登場はかなり先になると筆者(関 賢太郎:航空軍事評論家)は見ています。
ただ、こうした技術が今後さらに進化すれば、戦場の空は有人機と無人機が混在する新たな時代に突入するでしょう。パイロットは人間だけで戦うのではなく、複数の無人戦闘機を従えた指揮官として戦場を駆け巡ることになるのは、ほぼ間違いありません。
Writer: 関 賢太郎(航空軍事評論家)
1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。
コメント